ミュージシャンやマネージャー、メディア関係の人たち等々、フジ・ロック周辺にはいろんな人たちが顔を覗かせています。というので、始めたのがAround The Fest.というシリーズ。いろんな人たちに登場してもらってフジ・ロックをいろんな角度から見てみようと思っています。今回アプローチしたのは98年、2000年、そして、2001年とフジ・ロックに登場してくれたKEMURIのヴォーカル、フミオ。彼らにとって初めての苗場でのフジ・ロック'01の後、彼に会ったとき、「あれは、もう革命のようなもんですよ」と興奮気味に話していたのが印象に残っています。

通常であれば、新しいアルバムが発表されるとか、そういった機会にしたなかなかミュージシャンとのインタヴューはできないんですが、「fujirockers.org用なんですが...」とお願いすると、「いいですよ」と即答してくれたのがフミオ。ありがとうございました。
彼とのインタヴューが実現したのは2月24日。仲間のバンドが中野にあるスタジオでライヴをするというので、そのゲストという形でやったスタジオ・ライヴの直後。50人も入れば寿司詰めの酸欠状態だという場所で、手抜きナシの全力投球で行われたライヴは圧巻でした。
彼ら曰く、「こんなに体力を消耗したライヴは少ないよぉ...」というので、ライヴ終了後もかなりお疲れの様子だったんだが、フジ・ロックに関して、じっくりと話を聞くことができました。
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わずか25分にいろんな思いが交錯しました...(98年)
フジ・ロックを知ったのは、デビューした頃、97年ですね。でも、こうゆう性格ですから...(笑)ちょっと斜めから見ていたというか...(笑)実際、羨ましいんだけど。「行きたい」というより、「出たかった」ですよね。やっぱ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズとかグリーンデイとかが出てたし、フェスティヴァルに出るというのが夢でしたから。音楽をやり始めた理由のひとつに、アーティスト・アゲンスト・アパルトヘイトのイギリスでやったライヴ(政治犯として収容されていたネルソン・マンデーラ氏の釈放をもとめた大規模なもの)を見て触発されたというのもあったし... すごい出たかった。
(台風の影響で2日目中止になって)また、いろんな人がいろんなこと言ってるなぁ... 羨ましがってんだろうなって感じですかね。自分のそのひとりだけど... 悪く言う人多かったんですね。「やっかんでるんだなぁ」って思ったの、覚えてる。いろんなことを言う人いたけど、「だったら、自分でやってみればいいじゃん」って..
で、これでなくなられたら困るなぁ。(笑)まだ出てないのに、なんとかがんばってもらいたいなぁって、ホント。心の中ではそう思いつつも、いろんなこと言ってましたけど。「チケット代高ぇな」とか。
(フジ・ロックに出られるという話が来た98年)いやぁ、すごい嬉しかった。アメリカ・ツアーから帰ってきた時で、『77days』が出る直前。いまだに覚えてますね。サーシャ(ステージ関係では有名な人物で、fuji rockin' peopleにも登場して欲しい、スタッフのひとり)がMCやってくれて、『今、一番元気のあるバンドです」って言ってくれて、出ていったのはいいんだけど、喉がカラッカラで...『ニュー・ジェネレーション』か『プレイヤー』だったと思うんだけど、ワン・コーラスやっただけで「やべぇ!」って思いましたね。暑かったですね。朝の11時頃だったからまだよかったけどね。
なんか(ステージに立って)心がブルぶるっと震える感じがありましたよ。いろんなことを思い出した... のはあったかな。KEMURIじゃなくて前のバンドのこととか... 俺なんかより音楽も好きだったし、知っていたし、技術もあったし... そんな人たちで、もう音楽やっていない連中もいて... なんで俺がこんなところに立ってるんだろうか... なんて、不思議な感じがしたのはあったかなぁ。
まだそんなに大きなところでやってなかったじゃないですか。それなのに、なんでこんなに俺たちのことを知ってくれているのかなぁって、ちょっとびっくりしましたね。それまではライヴといっても、いつも同じような顔とか知っている人たちばかりでね。一気に知らない人たちがKEMURIを知っているような状態になって... 若干違和感ありました。なんか変わっていってしまうのかなぁとか... 25分ぐらいしかやらなかったと思うんですけど、いろんな思いが交錯しましたね。
いやぁ〜、こうゆうことがやりたかったんだ...(2000年)
初めてそれがわかった気がしましたね。全てに驚いたんだけど... 音楽って、最初は、みんな外で楽しんでいたものだと思うのね。祭りでドンドコやったり... 野外フェスティヴァルってそれにすごく近い感じのものだしね。しかも、みんなが知恵を使って、体力を使って... みんなで楽しむのが素晴らしいと思いましたね。いつもね、ア〜ンと口を開けてればね、親鳥がえさを運んできてくれるようなお客さんってどうなのかなって想いもあったし... だからこそ、僕らはこういったやり方(DIY)を続けているわけだし... 「なんか、僕らに似ているな」って思いましたね。なれ合いじゃない、甘ったるいものでもない、お互いひとつ度胸を決めて... みたいな。
なにより、あの場に行かないと楽しめないわけじゃないですか。電車に乗ってとか、なんでもいいんだけど、ほとんどの人がなんらかの旅をしていかなければ行けないわけじゃないですか。その旅がまず大きな意味を持っている。そこに行ってからのフェスティヴァルがまた意味を持っているし、そこで感じたこととか会った人とか... それが過去のものになってしまうのが残念というか、寂しいというか... 後ろ髪を引かれる思いがあってね。秋になって、クリスマスが近づくと、「ああ、フジ・ロックからもう3ヶ月もたったんだ」と思ったり。僕のなかではなにかフジ・ロックが基準になっていったような感じかな。元々音楽をどういった風に楽しんでいたか... ビジネスなんて抜きで、音楽ってどういうものなのかってのを垣間見れたような、きっかけを作ってくれたように思いますね。まぁ、いろんなことを言う人がいるけど、それは去年出たときにも、変わっているようには思えませんでしたね。
すごい緊張するんですよ、フジ・ロックというだけで... だから、考えている余裕はなくて、がむしゃらにやるだけなんですけどね、僕らは。僕なんかはそうかな。
去年のグリーンは緊張しましたね。何回もやらせていただいてるんですが、「これだ」ってのは... まだねぇ...(去年のヘヴンは最高でしたよと言うと)って、言ってくれるんだけどね。納得していないですね。(笑)いろんな状況があったけど、あそこでお客さんの足がグリーンなり、ホワイトに行ったということが納得いかない。グリーンでもっといいライヴをやっておけば、もっといいライヴができたはずだし、もっと人の心をつかめたはずなのに... という課題も残ったしね。
「もうKEMURI見たからいいや」って人もいただろうし、まぁ、あっちがすごい大物だったから仕方がないのかもしれないけど、なんかもっとできたんじゃないかって想いはあります。「だからこそ燃えた」というのはあるんだけど、いいライヴをするのは当然だと思うんですよ。お金もらってやってるし...
98年と今のフジ・ロックを比べて...
やっぱ、けっこう違いますよね。なんか、苗場のお客さんの方がかっこいいように思える。ひとつ根性座っているというか... わざわざ苗場まで来てテントで寝るとか... 街でかっこよくても、ああゆう自然の中に行くと、いきなり弱気になってしょぼくれる人って、やっぱ、多いし。ミュージシャンへの待遇はいいけど... もちろん、環境は整っていると思うけど、俺たちに比べたら、まだ過酷だと思うんですよ。3日間通して楽しむのは大変だと思う。だから、なおさらそう思うのかなぁ。「この人たち、こんな想いまでして...」って思うと同時に、「こんなに楽しもうとしている」という積極的なこととか。好きなバンドのTシャツ買うって何時間も物販の列に並ぶわ... なんか、自分の好きなものに一生懸命になっていくその姿勢はかっこいいと思う。
(好きなのは)やっぱ、ヘヴンかなぁ。アヴァロン・フィールドとか... あの辺のところが好きッスね。バンドはけっこう見ましたけどね、なんかヘヴンって、お茶とか飲みながらでも見られるじゃないですか、後ろの方で座って。雰囲気いいじゃないですか。なんか不思議なものがいっぱいありますよね。変わってるなぁ... て思いましたよ。
他のフェスティヴァルは(ライジング・サンもやったし)結構やってますよ。長崎もやったし、大阪もやってるし。それぐらいかな去年は。(他のフェスティヴァルとの違いは?)まず全然違いますよね。他のフェスティヴァルをやっている人は、フジ・ロックをどこまで見ているのか... どうなのかなぁってのはある。スケールとかアイデアとかに関してね。やっぱ、ロック・フェスティヴァルって、別に外でステージ組んでやる... だけじゃないと思うんですよ。でも、だいたいの人はそこで止まってしまう。じゃ、転換するときはどうするか、音楽が流れてないときになにするか... あんまり考えないような気がするな、他のを見ていて。
バンドがやっているときはお客さん盛り上がって楽しそうだけど、後は、何となく手持ちぶさたで... ものを食うと行ったって、やっぱ、焼きそば、ホットドッグ、フランクフルト... そんなレベルなわけで.... 別にゲレンデ食事じゃないんだからって思うし。フジ・ロックは、そういう点ではね、いろんな人が楽しげに参加しているしね。(笑)そういうところが違うし、エンタテインメントがなにかってわかっているんじゃないかなぁって思いますけど。それは日本がどうだ、海外がどうだってことじゃなくて、やっぱ、お客さんに楽しんでくれ、音楽だったら、こんなバンドが出るとか、そのほかのところではDJがこんなことをしているとか、空見て楽しんでくれ、景観を楽しんでくれ... いろんなものがある。
(改善して欲しいところがあるとすれば?との質問にじっくり考えて)あるとすれば、物販ですね。あの列は長すぎると思う。しょうがないとは思うけど、あれは改善するべきだと思う。買うのに3時間かかりましたとか... あれはやっぱりアホだと思う。それはひとつあると思います。やっぱ楽しみだと思いますからね。好きなミュージシャンを見て、Tシャツ売っていたら買うのはね。積極的なライヴの楽しみ方のひとつだと思っているから。あとはなにかなぁ... テント・サイトがねぇ、もう少し斜面じゃないところがいいかなぁってぐらいはありますね。いうならばそれぐらいかなぁ...
(これからのフジ・ロックに望むのは)なによりも継続ですね。なによりも続いていって欲しい。それはすごくあるかな。大変だと思うし、1回ニール・ヤング見ちゃえば、もう1回来ても去年みたいな新鮮みはないわけで、それは大変だと思うんですけど、続いていって欲しいなぁ。
(出して欲しいバンド)ブルース・スプリングスティーンですね。見てみたいね。あと、再結成ものはあまり見たくないですね、別にどうでもいいって感じ? まぁ、ロックじゃないかもしれないけど、トリニダードのスティールドラムのオーケストラとか... 昔いたマラヴォワとか見てみたいと思うかなぁ。いまだにジプシー・キングスとか好きだし...もちろん、日本のバンドでいつも一緒にやっている人たちに見てみたいものはありますけどね。たくさんいますよ。
あと、プロとしてプライドもってやっているバンドだったら、音楽的な好みの壁を乗り越えて、感動させてくれると思ってますからね。(逆に)中途半端なバンドは見たくないですね。ちょっと勘違いしているような... 人気もあるし、数字もあげててセールスもあるんだろうけど、芯が通っていないようなバンドも何個かあったし... そういうのはもういいかなぁってのはありますけどね。まぁ、それでもそういうのでお客さん入るってのもあるからなぁ(笑)
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「去年来た... 別に音楽関係じゃない仲間たちとかも行くって言ってるし... 友達がみんな、すごい楽しかったって言ってるんですよ。出るとかでないとか関係なしに7月の最終週はスケジュール入れないようにしてますからね、(笑)」
というKEMURIが再びフジ・ロックに出るのかどうか、なにも噂にはなっていないし、ORGスタッフには全然わからないけど、お客さんとして遊びには来そうな雰囲気満々のフミオ。このあとも延々といろんな話をしました。貴重な時間を割いてくれてありがとう。苗場で会えるのを楽しみにしています。
reported by ORG-master> (March 14, 2002)
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