シーズンオフ! フェスティバルを感じさせる4冊

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  まだ暑い日があるけど、夏も終わりを告げ、朝霧JAMを残すのみとなった今日この頃、みなさんいかがお過しでしょうか。そんなシーズンオフには、フェスティバルを取り上げた本を読んで、フェスの空気に浸ってみては?
  雑誌のフェス特集のように主なアーティストを取り上げてレビューするのもいいけど、関係者やお客さんとして、深く関わった話とか、日本の野外コンサートやレイヴの歴史を踏まえて、今のフェスティバル・ブームがあるということを学んでみていると、また違った楽しみ方ができるはず。

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 まずは、何といってもSMASHの馬鹿大将こと日高正博『やるかFuji Rock 1997‐2003』だろう。2003年までの記録なので、さらに変化したところもあるけど、フジロックの誕生前から日高さんがどんなフェスティバルを目指していたのか知ることができる。そして、さまざまな困難を経て開催に漕ぎ付けたフジロック1回目なのだけど、初めてで不慣れなことと、台風のために起きた混乱の内幕が生々しく描かれている。これを読んでいると、日高さんが何年も前からフジロックの構想を持っていて、日本各地で開催地を探していた。その中で「何年もの間、会津磐梯山、那須高原、猪苗代湖、いわき、千葉の海岸では木更津や富津、中里スキー場につま恋まで、いろいろなところにいってみた」とあるけど、氣志團万博やap bankの場所もみていたのだ。

 中盤からは苗場に移ったフジロックについてでステージの成り立ちやアーティストとの関わりなどを語っている。ジョー・ストラマーのエピソードが懐かしい。実際に語っているようなぶっきらぼうな文体が日高さんらしいし、また、「電気グルーブ」とか「リンプ・ビズ・キット」とか独特の言い方も味わい深い(笑)。

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 その『やるかFuji Rock~』にもコメントを寄せていた読売新聞の記者である西田浩の『ロック・フェスティバル』は、フジロック以前にいくつかあった大規模な野外コンサートやチャリティ・イベントのエピソードから語り始めて、日高社長の言葉を中心にフジロックの歴史を振り返り、サマー・ソニックやウドー・ミュージックフェスティバルまで触れる。ただ、おそらくベテランのフジロッカーにとっては知っていることだらけだし、新聞記者による新書という性格上、社会現象としてロック・フェスティバルに興味がある人や初心者向けなのだろう。この辺はコアな人たちには物足りない。その辺を補うのは、アメリカのテキサス州でおこなわれているサウス・バイ・サウスウエストやノルウェーの片田舎でおこなわれているクアルト・フェスティバルの紹介で、特にクアルトの手作り感あふれるフェスは魅力的だ。ただ、この本には、フジロックに先駆ける形で数年前から盛り上がっていた野外レイヴや、フジロックに刺激されて出てきた地方の中小フェスティバルについては、ほとんど取り上げられていない。

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 そうした点に不満を持つ人は、南兵衛@鈴木幸一の『フェスティバル・ライフ―僕がみた日本の野外フェス10年のすべて』がお勧めだ。南兵衛さんは、フジロックではアヴァロンの現場製作の責任者で、以前orgでもインタビューしているので、合わせて読んでいただきたい(前編後編)。野外レイヴやフェスティバルに実際に関わっている自身の体験談と、日高社長やUA、小林武史などフェスティバルに関わっている人たちとの対談が興味深いし、具体的なフェスの作り方まで実用的な一冊でもある。何よりもフェスティバルの空気を感じさせてくれるのだ。

 その南兵衛さんが「日本のフェスティバル史上のエポック」と呼ぶレインボー2000で踊っていた清野栄一による『RAVE TRAVELLER―踊る旅人』は、ロンドンのフィンズベリー・パークでおこなわれたセックス・ピストルズの再結成ライヴから旅が始まり、ヨーロッパのフェスやレイヴと、そこで生活する人たちを巡り、日本に戻り野外レイヴで踊りまくる生活を経て、インドのゴアへパーティーを求めにいくという、「音楽と旅」を描いた傑作だ。清野氏はフジロックのサイレント・ブリーズでDJをおこなっている(今年(07年)はオーガナイザーとして関わっている)。何よりも旅と音楽が分かちがたくあるのは、とても魅力的で羨ましくもある。

 そして、この本が魅力的なのは、レイヴやフェスの中に刺激だけでなく「退屈」もあることをはっきりと描いていることだ。特に、パーティがないときのゴアの退屈な日々を過ごすのが、むしろ贅沢なことなのだということが伝わってくる。それは、ドラゴンドラ山頂の空気に通じる、かな? この本が出たのは97年なので、フジロッカーに先駆けてフェス・ジャンキーがいたこと、この本にあるような空気が醸成されてフジロックが始まったのだなぁと実感できるのだ。


text by org-nob, photo by org-suguta