FUJI ROCK FESTIVAL'06 感動記

フジ・ロック・フェスティヴァル感動記第七弾

雨に泣き、雨に歌う

 ストイックな姿勢が若きロックキッズたちを熱くさせ、エモーショナルな演奏が胸を突く。息苦いライブハウスの中で、体全体で息をし、体全体から音を吸収する観衆。ため息が溢れるくらいの潔さが震動を呼び、感情を高ぶらせてくれる―。

 ストレイテナーとは、そういうバンドだ。その瞬間を共に体感するために、片田舎の小さなライブハウスに彼らが来る度、私は足を運んだ。

7月29日

 ストレイテナーのフジロック初登場の瞬間が訪れる前から、雨はしとしとと降り始めていた。ホワイトステージには、色とりどりのレインコートに身を包んだ人が集まっている。徐々にぬかるみ出す地面に気も留めずに、少し背伸びしながらステージを確認する人や、その登場を今か今かと待ち望んでいる人、後ろの方でまるで様子見をするように眺める人。そんな人の群れをかき分けて辿り着いたステージ前のモッシュピットで、私はぐるりと辺りを見渡した。

 少し、胸が震えた。

 フジロックのステージは特別だ。私がずっと焦がれていた場所だから、ということもあるが、それだけではない。交通の便も悪く、チケットだってお世辞にも安いとは言えないフジロックに、何万人もの人々が何ヶ月も前から準備をしてやってくる。体が欲するままに音楽を求めるオーディエンス。貪欲だけど、ガツガツしていない不思議な緩い空間は、音楽を楽しむために作られた楽園のようなものだ。楽しい以外の感情を忘れられる束の間の休日。何万人もの人が、限られた時間ではあるが、必ず笑顔でいられる場所。そういうフジロックの存在自体と、集まってくる人々がフジロックに対して抱いている感情すべてが私に特別な思いを抱かせる。

 そんな場所で、ずっと応援してきたバンドを観るということを、特別という言葉以外でどう表せばいいのか。彼らの登場を待つ間、重苦しい厚い雲を眺めながら、そんなことを考えていた。

 灰色の絵の具で塗りつぶしたような不気味な空からは、遠慮気味に細い雨が落ちていた。タイムテーブルの時刻通りに彼らは登場し、すぐ奏で始めた『TRAVERING GARGOYL』は、これから始まる約40分の旅への誘い。

突きあがる拳。
沸き上がる歓声。
響き合う音。

 強くなってきた雨に打たれるオーディエンスに気を遣ってか、ホリエが「雨、きついな」と言う。それから「どうせ雨降るだろうと思ってセットリストに入れてたら、ホントに降った」と、苦笑いして奏で始めた『TENDER』が、“7月の雨”の中、流れるような優しいメロディと共に美しく鳴り響いた時は、涙を堪えるのに必死だった。

 激しく降る雨がひとつの演出のように思えた。

 この時ほど、空から降る大粒の雨に感謝したことはない。本当は雨が嫌いだ。夏の雨は特に。埃っぽい匂いと、まとわりつく空気が不快感を煽るから。でもこの日の雨は、天からの贈り物だと思った。本当に思えた。

 体の中から沸き上がる高揚感と引き換えにしみ込んでくるメロディ。激しく感情的なドラミングを、体から奏でられるベースラインを、美しい旋律を歌う優しい声を、あの雨が包み込んでいた。

 時間が経つにつれ、天候と反比例するように集まってくる人。動く波。叫びにも似た感情の渦が舞う。どうしたって適わない。雨が嫌いな私が、雨に感謝する日なんて、この先起こるかどうか分からない。

 頬を伝うのは雨の雫なのか、それとも目から溢れた涙なのか。そんなことはどうでもよかった。『MAGIC WORDS』でモッシュして、雨と泥でぐちゃぐちゃになっても、レインウエアの中が汗でびっしょりになっても、髪が乱れても、ふとステージを観れば、これ以上ないくらい優しい微笑みを浮かべた3人がいたから、それでいい。

 何度も観てきた彼らのライブの中で、これほど胸を打たれたことはなかった。「良かった、最高だった」終わった瞬間はそんな陳腐な言葉しか出て来なかったけれど、それこそが本当の気持ちだったと思う。

 そんな平凡な言葉を、繰り返し何度も何度も口にしたあの日の帰り道を、私は一生忘れない。

photo by ORG-q_ta
text by kaori

<< 前の記事へ 次の記事へ >>


”ROCKな思いをTシャツに。'07 orgTシャツデザインコンテスト開催”

ヒントを教えるすっぱ抜き

春うらら、脳を鍛えるすっぱ抜き!

今週もすっぱ抜きをお届け!

計8アーティスト、すっぱ抜いたんか!?

ROOKIE A GO-GO出演バンドオーディション開催!!

忌野清志郎さんにマントを送ろう! お針子会ファイナルのお知らせ

すっぱ抜くのさ! 計15アーティスト! 大将インタビュー第一弾!

ロッカーズ 避けては通れぬ すっぱ抜き(2/25予告)

仕事でフジロックに行く〜エーグル西森さんインタビュー

グラストンバリー行きを計画している人は絶対に登録を!

宿泊についての大切なお知らせ~苗場プリンスホテルのツインルーム提供について~

キヨシロッカーズ開催せまる! 2/18(日)は原宿で会いましょー。

早いチケット、詳細発表されましたよ〜。

早いチケット、詳細は本日発表ですよ~。

>>もっと見る