FUJI ROCK FESTIVAL'06 感動記
フジロック感動記~Some Glorious Days~
フジロックフェスティバル!おととしはロックオデッセイ、去年はサマーソニックと夏のフェスティバルへの参加が定着してきた俺だが、ついに念願かなってフジロックに、二日間だけだが、参加することができた。なぜフジロックは特別かというと、いくつかの理由が挙げられる。一つは、フジロックが日本のロックフェスティバルのパイオニアであるということ、そして他のロックフェスティバルと違って自然の中で開催されるということだ。
フジロックはイギリスのグラストンバリーフェスティバルを手本にしており、更には60年代のウッドストックにまでさかのぼることができる。「愛と平和」・・・それが堂々とうたわれる時代であったが、音楽の力を信じるという理想が、フジロックにも確かに根付いているように感じる。みなでゴミを拾い、助け合い、音楽に身を委ねる。それは理想にすぎないかもしれないが、あの桃源郷には、確かにそれがあった。

(フジロック初日)
友人のさいやんと横浜から深夜バスで到着したのが6時すぎ。まだ早い時間だが町のいたるところに明らかにフジロック参加者と思しき人たちの姿が。温泉に入っていると丁度いい時間になってきたので会場に向かう。チケットをリストバンドに交換し、会場に入るがそこで見た風景に目を奪われた。メインステージであるグリーンステージの観客席は、広大な芝生で、そこにいたる人たちがシートや椅子を広げている。まるでピクニックだ(本当は後方にしかシートは広げてはいけないのだが)。ステージの後ろには苗場の山々がそびえたっている。それは俺のフェスティバルの概念を根底から覆す光景だった。
2人で会場内を散策しているうちに11時になる。最初はグローバル・クールという団体のスピーチから始まった。ゴミをリサイクルし、地球の環境が悪化していくのを防ごうというアピールで、俺も環境に対する考えを改めさせられた。俳優のオーランド・ブルームも駆けつけ、スピーチしていたが、このように環境についても言及していくのもフジロック・フェスティバルの特徴といえる。
スピーチが終わり、主催者である日高社長に紹介され、ストリング・チーズ・インシデントの演奏が始まった。このバンドはアメリカのジャム・バンドで一曲が10分以上に及ぶこともあり、曲の切れ目もわからないこともある。メンバーの一人一人が凄腕で、何よりも心から音楽を楽しんでいることが印象的だった。そしてそのライブは、確実に俺が今までに見たライブでもっとも素晴らしいものだった!ギター、キーボード、バイオリンが絡み合ってぐいぐいと高めあっていく。踊ろうと意識しているわけでもないのに体が踊りだしている。新潟の自然と、音楽と、自分が一つとなった最初の瞬間だった。
二つ目のバンドは、フロッギング・モリーというアイルランドのパンクバンドで、これは前もって視聴してとても楽しみにしていたバンドだったが、自分の想像をはるかに超えて素晴らしいものだった!メロディーはアイリッシュで、使っている楽器もアコーディオン、バイオリンと異色である。しかしその性急なテンポとエネルギーはまさしくパンクだった。曲の展開はみな同じ、盛り上がる場所も分かっているのにこれが盛り上がる盛り上がる!そして楽しい!全曲飛び跳ねて暴れて、会場が一つの巨大な蛇であるかのようにうねりをあげていた。
次はグリーンステージでクーパー・テンプル・クローズだったのだが、ここはあえてそこから30分以上かかるフィールド・オブ・ヘブンに加藤登紀子を見に行くことにした(さいやんを説得するのに苦労したけど・・・)。加藤登紀子は映画紅の豚の「さくらんぼの実る頃」「時には昔の話を」などの代表曲を持つベテラン歌手。フジロック前のインタビューで「私は料理にたとえればこの年になってようやく仕込が終わったようなもの。今ならお客さんの望むものを、どのような形でも、提供することができるの」と語っていたその言葉を聞いて、俺は加藤登紀子を見ることに決めた。そして、その期待は裏切られることはなかった。モンゴル800やジョン・レノンのカバーも披露し、エンターテイナーとしての実力を見せ付けたが、やはり圧巻はオリジナル曲。特に「レモン」でのファルセットは圧倒的だった。

加藤登紀子のパフォーマンスに後ろ髪を引かれつつも、グリーンステージのアジアン・カンフー・ジェネレーションへと途中で向かうことに。彼らへの思い入れは去年のサマーステージから。当時俺は彼らにほとんど興味がなかったのだが、さいやんが乗り気だったこともあり見たそのステージがまさに圧巻だった。それから熱心に聴くようになり、今ではほとんどの曲を歌うことができる。それだけに期待も大きかったが、逆に不安も大きかった。というのは、今年になってでたアルバム「ファンクラブ」の内容が少し期待はずれだったからだ。確かに演奏は円熟してきていた。だが曲は初期の吸引力を失っているように感じて少し寂しかったのだ。
そんな中、演奏が始まった。一曲目は「センスレス」。アルバムファンクラブの中でも一際異彩を放つこの曲はジャムセッションから生まれたそうだ。続いて「Re:Re:」そして初期の大名曲「君という花」へ。しかし、いまいち自分の中で盛り上がるものがない。ボーカルの後藤の声が出ていない。ドラムの潔が走りすぎている。なんだかなぁ・・・と思いながら見ていると、
そこで後藤がMCをはさんだ。初めてフジロックに出た話、そして今グリーンステージに出ていることの感慨を飾らず話す。その姿に改めて好感を覚えたとき、次の「ブルートレイン」が発射される。ようやくみんなあったまってきたようで、これは素晴らしい演奏だった!そしてその勢いを持続したまま、ジャムを織り交ぜつつライブは最後までつっぱしっていった。
このライブを見て思ったことがある。まず結論から言えば、今回のライブは去年のサマソニでのライブを上回るものではなかったように思う。しかし、俺はこのバンドの評価を下げなかった。その理由として、一つは演奏重視であるファンクラブからの「桜草」がこのライブのひとつのハイライトとなったこと。そして初期の曲も全てがバンドの今の音になっていたことだ。そのことから、バンドは確実に成長を遂げていること、そして次のアルバムでは確実にもっといいものが生まれてくるであろうことがわかった。いずれにせよこのバンド、まだまだ大きくなる。
そのままいい位置をキープしつつ、つづいて登場したのはダーティ・プリティ・シングスだ。このバンドはリバティーンズのカール・バラーがピート・ドハーティと決別した後作り上げたバンドで、リバティーンズとの大きな違いはその音の骨太さだ。これは元クーパー・テンプル・クローズのベーシスト、ディズが加入したことが大きく影響しているが、これがまさに俺好みの音。CDを聞いてかなり期待して臨んだこのライブは、その期待が裏切られることはなかった。一曲目の「Deadwood」から会場は沸点に達し、それから途切れることなく曲が発射されていく。そしてこのライブ一番の見所はやはり、リバティーンズの中でも屈指の名曲「Death On A Stairs」だろう。Oh Baby Please Kill Me… Oh Baby Don't Kill Me… ライブで最も盛り上がるのが前のバンドの曲というのは皮肉だが、新曲群の中で唯一リバティーンズナンバーに勝るとも劣らない盛り上がりを見せたのが、アンセム「Bang Bang Your Dead」だった。ここでカールは着ていた上着を全て脱ぎ、女性ファンの黄色い声援がこだまする(ドラマーのゲイリーは最初から脱いでいたのに・・・)。最後はやはりリバティーンズの「I Get Along」で大団円を迎える。全ての曲が切れ味鋭く、「かっこいい」を体現したようなステージだった。
続けてグリーンステージで演奏したのはシングル「Are You Gonna Be My Girl」一曲で世界を制してしまったJetだったのだが、疲れ果ててレモンサワーを飲みながらシートで爆睡してしまう。さいやんはこのバンドを一番楽しみにしていたようで、かなりいい位置をキープしながら見ていたらしい。起きたとき、まだ演奏は続いていたのだが寝ぼけながらふらふらとレッドマーキーのズートンズを見に向かう。ズートンズはフランツ・フェルディナンドと共にUKロックの新たな黄金期を築いたと言われるほどのバンドで、特にそのライブには定評がある。しかし俺の目当てはバンドの紅一点のアビ(笑)。とにかく美しく魅力的な彼女がいてこそのズートンズといえるだろう。そしてその夜の彼女もまた魅力的だった。サックスをプレイし、コーラスに参加する。その姿に思わず目を奪われる。しかし、フランツ・フェルディナンドの時間が迫ってきていたので、三曲ほどで切り上げ、レッドマーキーを後にした。
フランツ・フェルディナンドを見るために、人が結集する中さいやんと合流。しかし俺には懸念があった。フランツにグリーンステージのトリは早すぎるのではないか?まだ彼らは2枚のアルバムしか出していない。そしてその演奏力は?ベースのボブは1stアルバムを出したときはまだ初心者だったはずだし、現に二年前にフジロックに来たときの演奏はまだ稚拙だったと聞いている。そういった理由で彼らはまだ実力不足ではないかと心配をしていたのだが、一曲目の「This Boy」が始まったときそのような思いは吹き飛んでしまった。骨太な演奏!パワフルなリズム、そして歌唱力!なにより彼らが楽しんでいるところがいい。バンドの新しいアンセム「Do You Want To」では、早くも会場は沸点に達し、モッシュピットではモッシュが飛び交う。そしてアルバムではどこかおどけた、というかコミカルなイメージだった曲たちもライブではかっこいいの一言。「Walk Away」や「Elenor Put Your Boots On」といったバラードでさえライブではダンスチューンに変えてしまっている(ちょっと笑ってしまうところもあったが)。おなじみ「Take Me Out」では合唱が起こり、「The Fallen」ではアレックスによるパワフルなメンバー紹介も。てゆーか "Do You Want To Know His Naaaaaaaaaame!?"ってどんな紹介の仕方だよ(笑)。そんなこんなで一時間ちょっとのステージを一気に駆け抜けた彼らは、本気で催促するアンコールの声に応えて再びステージに戻ってくる。アンコール一曲目は「Outsiders」。アルバムの最後を締めくくるこの曲だが、こんなにかっこよかったか?と思うほどのパワー。気付けば三人がドラムを叩き、六人が太鼓を叩いているというまさにお祭り状態。その時は気付かなかったがどうやらそのうちの一人はアジカンの潔だったらしい。そして最後を締めくくるのはやはり「This Fire」!まさにOut Of Control(制御不能)な炎が観客を、ステージを包んだ瞬間だった。
この日は素晴らしいライブばかりで完全燃焼した俺たちだったが、民宿に着いたのは二時過ぎ。身も心も疲れ果ててしまったフジロック初日だった。
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