南兵衛@鈴木幸一さんインタビュー
『フェスティバル・ライフ』の著者、南兵衛@鈴木幸一さんインタビュー:後編
【日本のフェスのお父さんと、お母さん!?】
――南兵衛さんから見て日高さんとはどんな人ですか?
南兵衛:別に一緒の会社で仕事してるわけじゃないし、触れているときは少ないけど、本人は馬鹿大将っていうけど、ある意味その通りだね。気持ちのいい馬鹿だと思うよ(笑)。どこか覚悟を決めてスコーンと抜けている日本のフェスのお父さんじゃないかな。僕の中ではレインボー2000の越智純さんが、(日本のフェスの)お母さんだと勝手に思っていて、すごく恵まれた出会いの中で仕事して来れたなぁとしみじみ思ってるんだよね。
日高さんだって人間的に完璧じゃないけど、ナタでバスバス切っていくような天才だろうね。特にオレンジコートやボードウォークも含めてさ、毎年驚かされた。フジロックを3日間にしたときからそうだよね。「絶対無理、止めた方がいい」誰もが反対したのを押し切りながら、でも最終的には納得させられる。天才だよね。自分でも分かるんだけど、イベントのプロデュースをしていてみんなに反対されようと、これはやらなきゃいけないんだということが実際に現れてくるんだよね。そういう気合いを学ばせてもらった。
【2003年のメタモルフォーゼは大変だった】
――『フェスティバル・ライフ』で挙げられている以外で印象的なフェスは?
南兵衛:エポック的な意味では武尊祭かなぁ。標高1500メートルでおこなわれたフェスで、高山の気持ち良さもあったし。トランス系のDJはもちろん、デートコースペンタゴン・ロイヤル・ガーデンとかROVOとかジュノリアクターとか出た。デートコースは初めての野外フェスじゃないかな? ジュノリアクターのライヴはすごく印象的だったね。
トランスのソルティスも美術がすごくてね。夜すごいなという美術はあるじゃん、だけど昼間見てもすごいなというのはあまりない。星形の巨大なオブジェを立てるんだけど、古典的なSFの異星の物体がポンと置かれている感じで、トランスのクレイジーな連中が8000人くらいいて、周りにいる人間の姿だけでも異次元感があるのに美術でまた飛ばされて、非日常性ならフジ以上だね。
――2003年のメタモルフォーゼはどうでしょう? 富士山がとてもきれいだったときの。
南兵衛:ああ、朝焼けのすごかったときね。あのとき大変だったんだよ。お客さんが思ったより来たのと、出店者が少なくて、ごはんが足りなくなっちゃって、開催中に麓と4往復したんだよね。麓の24時間のスーパー3つ見つけて、「20キロのお米、6袋全部下さい」とか「生鮮コーナーの豚肉全部下さい」とか、あんな買い物は二度としないだろうな。それでヘロヘロになりながら、朝になって朝焼けがブワーーって。すごかった。

【感動したものに対して恥ずかしくない自分でありたい】
――まだ行ったことないフェスで、行きたいのはどこですか?
南兵衛:ライジングサン・ロック・フェスティバルが一番行ってみたいね。僕にとってはアース・セレブレーションも大切なので、なかなか行けないだろうな。でも、いつか行こう、行けると思うし。行こうと思っていて可能性あるのは、ロック・イン・ジャパンに来年あたり行きたいよね。
本当、いろんなものを見た方がいいと思うよ。あとね、心底感動できる何かにできるだけ触れた方がいいよ。そういう体験の強度ってうのは、フェスや音楽の場ってすごい高いんだよね。そのときに震えた気持ちの強さっていうのは、生きていくうえでのエネルギーになるし、仕事とかで忙しさに負けたり、いろんなことに負けたりするけど、そのときに良いものにしたいという気持ちは、やっぱり自分が感動した何かに対して恥ずかしくない自分でありたいという気持ちなんだよね。
そういう意味では、フェスはどんなカルチャーにも勝るんじゃないか。例えば演劇マニアからすれば、「野外フェスはまだまだ。もっとすごいものがある」かもしれないけど、僕が知っている限り最高だと思うね。
ロックフェスに比べれば、集客で言えば、阿波踊りとか札幌のYOSAKOIソーラン祭りとか青森のねぶたとかの祭りで100万人以上集めるのは結構ザラにあるんだよね(注)。無料だし、在り方自体が違うけど、その意味ではフジって、(一般の人に与えるインパクトは)決してものすごいわけじゃないんだよ、という目線を持つと、本当にやれること、やりたいことがすごくいっぱい出てくる。まだまだ退屈しないよ。
(注)高円寺の阿波踊りも約120万人、博多どんたく200万人、岸和田のだんじり61万人、郡上八幡の郡上おどり30万人など。ちなみに競馬の日本ダービーは最高19万人(1990年)、2006年のF1日本グランプリは16万人、阪神甲子園球場は満員だと約5万人、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)は同じく約7万2千人。
text by org-nob, photo by kuniko,keco,maki
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