photo by Koichi “hanasan” Hanafusa
おそらく、みなさんご存知だろう、かつてフジロックと歩調を合わせるように韓国で開かれていたのがインチョン・ペンタポート・ロック・フェスティヴァル。そのメイン・プロデューサー、スティーヴン・キムが今年から、韓国の苗場のような場所、チサンで始めたのがチサン・ヴァレー・ロック・フェスティヴァルだ。そのラインアップを見てわかるようにフジロックと連動を始めたのは明らかにこちら。そのプロデューサーが毎年のように届けてくれるのが韓国インディの強者たち。今年は、フジロック二度目となるクライング・ナットがやってくる。
近くて遠い国というのも昔の話。フジロックとは全然関係ないけど、韓流ブームがあったし、リーマン・ショックの流れで韓国通貨、ウォンが暴落したこともあって、このところ、日本から韓国への人の流れが一気に膨れあがっているのは、みなさん、ご存知の通り。そんななかにロック好きがいたら是非訪ねてほしいのが弘大(ホンデ)あたりだ。弘大というのは芸術・美術系で韓国をリードする弘益大学の略称で、そのせいか、センスのいい店やバー、レストランのみならず、学生にとって必要不可欠な格安の食堂などで溢れているのがこのエリア。同時に、数々のライブハウスやクラブが集中していて、週末になるといろんなバンドが演奏している、韓国ロックのメッカと言ってもいいだろう。ここに足を踏み入れると、どこかで下北沢にいるうな感覚になるのだ。
といっても、地元のミュージシャンや関係者によると、軍事政権の影響でわずか10数年前まで残っていたのが、政府による音楽の検閲。自由に音楽活動ができるようになったのは95年前後だというので、まだまだ韓国インディ・シーンの歴史は短い。日本じゃなかなか想像できないと思うんだが、70年代初めには、男子の長髪が禁止され、はさみを持った警察に髪を切られるといった時代もあったというから驚かされる。実を言えば、それ以前には、韓国代表するギタリスト、キム・ホン・タックに率いられたサイケデリック・ロック・バンド、HE6(代表作はなんと英国でもリリースされた『Go Go Sound ‘71』(UK import / KR import )といった驚異的なバンドがかなりいたということで、好き者の間ではそのあたりの再評価が始まっているとか。それはさておき、そんな事情で生まれた『ロックの空白』を乗り越えて、ここ数年、韓国のインディ・シーンが元気なのだ。
そんなホットなシーンを代表するバンドの数々がこれまでもフジロックに姿を見せてくれているんだが、その最初に姿を見せてくれたのがクライング・ナットだ。My Spaceには、そのときの映像アップされていて、実に懐かしい。
My Spaceの動画セクションには、その他にも数々のPVがアップされていて、言葉はわからなくても、彼らのワイルドな音楽性やラディカルな姿勢も一目瞭然。ぜひチェックしてもらいたいと思うのだ。
実は、あのフジロック出演からしばらくの後、韓国では避けられない兵役で、メンバー全員が2年間活動を休止していたとのこと。活動再開は2005年かとある。すでに韓国ではメジャー的な展開をしているとはいえ、まだまだストリート的な響きを抱えていて、そのあたりに意気投合したんだろう、昨年は、大阪のドーベルマンが彼らと一緒に「Asian Rock Bus(エイジアン・ロック・バス」というバス・ツアーを実現している。どうやら、釜山国際ロック・フェスティヴァルで両者が同じステージに立ち、意気投合したらしいんだが、そのときのツアーで彼らを体験した人も多いかもしれない。
実は、そのクライング・ナットをこの5月終わりに、ソウルのオリンピック・スタジアムで開かれた、「タイム・トゥ・ロック・フェスティヴァル」で見ているんだが、そのときのフォト・レポートはこちら。どこかでフロッギング・モリーからポーグスあたりを思い起こさせるのが彼らのライヴなんだが、そこにさらにパンク色を加えて、韓国歌謡までをも飲み込んでいるといった感じだろうか。なにはともあれ、ステージからあふれ出るエネルギーは強力。ぜひ、彼らを体験して欲しいと思うのです。