前回のアーティスト情報にひき続き、日高大将のインタビューをお届け! 今回は、昨年登場し、行った人々から軒並み“一番面白かった場所”と大好評だったキャバレーフィエスタの話題を突っ込みましょう。GREEN STARのオープニングパーティで仕入れた情報として4/13の記事でも少しお伝えしましたが、どうやら今年は様相を一変させる模様ですよ。
?去年はあそこに行く度に日高さんを目撃しましたけど、今年はまた違った展開をみせるそうですね。
日高さん(以下:日)「去年はあそこに“メキシコ”をテーマにしたキャバレーをつくったわけだけどさ。特にチャンバラ寸劇は、脚本つくったり殺陣の練習したりとにかく準備が大変でね。ああいうことは、ジョークが要る。それには経験が欠かせないんだよね。だから、離れられなかったし、もうほとんどあそこにかかりきりだったよね。正直、疲れたよ。そこばかりにも居られない(笑)。まあ、その変わりではないけどね、今年はまた違うものをと思ってパリのムーランルージュをイメージした場所を作ろうと思っている。エディット・ピアフの歌の世界観でね。20世紀初頭のパリはヨーロッパでも特に国際的な街だったんだけど、様々な音楽を演るアーティストに登場して貰おうとも考えているよ」
?ステージをつくるんですか?
日「スペースの問題があるから、そんなに大きなものができるわけではないけど、ちゃんとしたステージを作ってバンドも3?4つほど出て貰おうと思っているんだよ。ワインとかカルバドスとか、フランス系のお酒を出してね」
?出演者も発表されるのですか?
日「するよ。前もって発表しない方が意外性があって良い、なんて意見を聞くけど、でもそれは出演してくれる人に失礼だろ。そこにしか出ない人もいて、わざわざ来てくれるんだからさ」
?それにしても、毎年必ず新しいものが出てきますけど、またお金がかかりそうなことをやりますねぇ。
日「そうだね、毎年のことだけどスタッフは戦々恐々としているよ(笑)。“また、金にならないことを・・・・・・”って。でも、同じことやってもつまらないだろ。あんな山の中を歩かされるわけだからさ。行った先に楽しいことがあったら幸せだろ」
?フジロックでは、そういったある意味お金にならないことが非常に多い気がします。他のフェスティバルを見てみると、細々と様々な場所で、企業との協賛によって施設やサービスを提供しているようです。そういった戦略はとらないのですか?
日「そりゃ、お金は欲しいよ。だからといってなんでもかんでもスポンサーに頼っていくのは違う。“SMASH go round”って掲げてやっているわけだからさ。それは“ひとりで歩いていく”ということでしょ。お金を出すからデカイ看板たてさせろ、というわけにはいかないよ。もちろん、色々な企業に協賛して貰っているし、大きな助けになっているんだけど、協力してくれている企業は、会社も関わる人々も皆一緒に面白いことをやろうって楽しんでいるよね」
?とはいえ、お金を出す企業としては、少しでもお客さんにアピールしたい、と思う気がします。
日「そうだね。だから、よくフジロックはハードルが高いっていわれるけど、俺は違うと思うんだよね。あの苗場の山の中で、森を バックに大きな看板があっても逆効果だと思うんだ。だから、あそこで一緒に楽しいことをやりましょう、というカタチで参加して貰っているんだよ。参加する企業の人たちは、毎年、あの手この手でお客さんに楽しんで貰おう、役に立とう、と頑張ってくれているんだよね」
?確かに、フィールドオブヘヴンにスポンサー名の入った看板がデカデカとあったら、違和感を感じますよね。
日「マラソン中継なんかを見ていてもさ、胸のゼッケンのところのロゴなら分かるけど、沿道一面にスポンサー名の入った旗や垂れ幕があるんだよ。そういうのはイヤラシイと思うんだよね。だから、フジロックでは企業の名前を大きく出すのではなく、もっとお客さんのためになるカタチで協力してもらっているんだよね。そういうことを理解してくれているのは、すごく感謝しているよ」
?文化的な事業に協力する、といことは企業の責任でもありますよね。
日「モーツァルトやシューベルトなどの音楽家たちを支えたのはお金を持った貴族たちだったでしょ。でも、そういう人たちは名前を出さない。彼らが演奏会を開くときに、自分の名前を冠して“○○公爵の夕べ”なんてやらないだろ。それと同じで、文化的な協力は企業の成熟を表しているんだよね。」
?そういえば、フジロックではビールは一種類しか売ってない、ということもないですね。
日「当たり前だろ。居酒屋なんかでもさ、看板とかグラスとか提供するかわりに、ビールはそこのしか売れない、ということがあると思うんだけど、それはおかしいと思うんだよね。楽しい時間を過ごしてストレスを発散するために居酒屋に入るのに、好きなビールも飲めない、なんて矛盾してるよね」
?さて、話は変わります。今年のフジロックの公式サイトなどを見ていて非常に印象に残るのは“マナー向上キャンペーン”です。恒例の元旦のアナウンスでも大きく謳いましたし、これはどうしてですか?
日「やっぱり12回もやると、新しいお客さんが増えてくる。彼らは知らないんだよね。ああいう何もない山の中でフェスティバルをやることの難しさが。成功させるためには、お客さんの協力が不可欠なんだよ。昔から来ている人たちでも、毎年のことだし慣れてきて、たがが緩むようになっていることもあるしね。それから、これは同時にスタッフへの喝でもあるんだ。慣れることの危険性ってあるしね。ほんの小さなことでつぶれていくものだから、あとで後悔することを極力少なくしたいんだ。だから13回忌じゃないけど、俺からの念仏だよ(笑)」
?確かに、あの場所で快適に過ごすには、ある程度努力が必要だと思います。
日「もちろん、できれば言いたくはないことだよ。でも皆で楽しむためにはさ、必要なことだからね、あえて言わせて貰っているんだ。だから皆、ちょっと意識して貰って、一緒にフェスティバルを楽しんで欲しいよね」
?長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。
というわけで、今年一発目の日高さんインタビューは無事終了。ご本人から実際に生で話を聞くと、お客さんを楽しませたい! という心意気がひしひしと伝わってきました。今年もワクワクです。13回目の開催ともなれば皆勤賞?今年初のお客さんまで実に様々。“フジロック”という最高の楽園は、出演者、スタッフ、地元の方、そして何よりお客さん一人一人によって創られます。来た人みんなが気持ちよく楽しむことができるようfujirockers.orgでもそのあたりの情報を今一度、発信していきたいなと思います。
本番まで約3ヶ月。日高さんインタビューは、チャンスがあれば是非またやりたいと考えています(もちろんまだ未定ですが)。「大将に聞きたいことがあるんだー!」というフジロッカーズはVoiceまでご意見をお寄せください。お待ちしています。
text by org-Takao , Riko
photo by q_ta , Hiroqui