-
Jul . 5
1999
FUJI ROCK FESTIVAL 97

-
How 2 survive & Have fun !
'97 連載
新連載(仮) / 続・最終回 / 最終回 ? / 第7回 / 第6回 / 第5回 / 第4回 / 第3回 / 第2回 / 実 録

Prev FRF98

Prev FRF97


Previous Fuji Rocks

HOW TO SURVIVE & HAVE FUN ! [1997.8.16]

新連載(仮):終わり、始まる

photo 嵐が去って穏やかな空が会場を包み込んでいた頃、ウェッブを助けてくれたfolliniとakahiro君が12:30頃にバスが出るという情報を聞きつけて帰宅準備を始めていた。改めて、彼らにはお礼を言いたい。ありがとう。自ら交通費を払って、まともに宿泊する場所もなく、一銭のギャラも支払われることなく... それでも、文句も言わずに雨のなかで写真を撮ったり、原稿を書いてくれたり、翻訳してくれたり... 何度お礼を言っても十分ではないだろう。しかも、その後、話を聞けば、結局4時間近くもバスや電車を待って家路についたとのこと。本当にありがとう。

photo 会場では、そのころ、撤収作業が始まっていた。hana&yukiが担当するウェッブ班はアーティストにメッセージを書き込んでもらおうと2階の楽屋に設置していた1台をまずは整理。結局、ジョー・ストラマー以外は誰もメッセージを書き込んでくれなかったのが実に残念だが、仕方がない。そして、本当は会場に来たみんなに使ってもらおうと思って設置していた2台も撤去。キーボードのみならず本体の上にはカップヌードルのスープがかけられ、悲惨な表情を見せている。これがまともに使えたのは25日のみ。コンピュータが設置されていた本部前は雨を避ける人たちで溢れ、コンピュータを使える状態ではなかったからだ。

 機材を東京へ運搬する車の手配をしようと本部2階ににいくと、そこでまた顔を合わせたのがジョー・ストラマー。この時、彼がこんなことを言っていたのが嬉しい。

「知っているかい? (野外フェスティヴァルやコンサートに関して言えば)スウェーデンじゃ、一滴でも雨が降ってきたら、みんな家に帰るんだ。イギリスじゃ、雨が降っていたら、人なんて来ないよ。でも、日本は最高だよ。あの雨のなかで子供たちが歌って踊って演奏を楽しんでいるんだよ。世界で最高のオーディエンスさ!」

 同時に、今回のフェスティヴァルの27日分をキャンセルしたことに関してこうも語っている。

「勇気ある判断だった。最大級の賛辞を送りたい」

 今回のフェスティヴァルに関して数多くのミュージシャンからメッセージが集められているのだが、それは近々このウェッブ上で発表されることになるだろう。いろいろな問題に台風という不運な要素が重なったとしても、初めてのフェスティヴァルが動き出したのは確か。なによりもそれを祝福しているミュージシャンは多いのだ。

photo そんな話をしているときに、会場にふらりとやってきたのがリー・ペリー。残念ながら、彼のライヴを会場で見ることはできなかったが、この日、本部ではジョーとリーの出会いを目撃することができた。

「リー、俺だよ、ジョーだよ。一緒にレコード作ったジョーだよ」

 と、まるでスターに会った少年のように語りかけていたものだ。そして、一緒に写真をとってくれよと頼まれて撮影したのがここに掲載されているものだ。

photo リー・ペリー、マッシヴ・アタック、マッド・プロフェッサー... 楽しみにしていたライヴが見られなくて残念な想いをしているのは観客だけではない。この日のために毎日毎日深夜の2時や3時まで、そして、会場入りしてからほとんど満足な睡眠をとることもなく取ることもなく働いてきたスタッフとて同じこと。誰もの顔に見えるのは悔しさと悲しさであり、疲労感でもある。が、まだまだ仕事は終わっていない。会場の清掃から、キャンセル後の処理までが山積しているのだ。

photo あのキャンセルから4日後、現地での実状調査に来た「馬鹿大将」の車に同乗して会場を再び訪ねてみた。聞けば、この日、やっと清掃が一段落したとのこと。本部前は泥沼のようになっているのだが、まるで夢の島だったステージ前から少しのぼると緑の芝生が顔を出している。なんでも清掃は139号線沿線から始まり、10tトラック14台分のゴミが会場から運び出されたという。「馬鹿大将」からの報告にもあるように、周辺の学校、神社、空き地といったあらゆる場所でゴミを散乱していったのが一部の心ない観客たち。さらには、銀行の駐車場の鍵がこじ開けられ、民家に家宅侵入して食べ物を盗んだり、あるいは、親切な人がお風呂を使わせてあげたというのに、風呂場を泥だらけにして礼も言わずに立ち去った人がいたり、駐車場の入り口に車をとめたり... と、そんな観客の代わりに謝罪をしながら、会場のみならず周辺を毎日50から70人のスタッフが黙々と清掃を続けていたということだ。

photo その間にも、掲示板には罵声が飛び交っていた。ウェッブのディレクターとして報告したとおり、批判や意見は当然なされるべきだろう。が、あの時、ボードを支配していたのは、そういったものばかりではなかった。誹謗中傷に始まって罵声や恫喝から恐喝に名誉毀損までが顔を出していたばかりが、フェスティヴァルで楽しんだ人たちの声が否定され、攻撃されていたのだ。それに直面しながら、彼らは黙々と会場を清掃し、心ない一部の観客の代わりに地元の人々に謝罪していたのだ。彼らの気持ちを思うと、なんともやるせない気分になる。この時、ヴォランティアとして仕事をしてくれた人たち、そして、スタッフのみんなにも、改めて感謝の言葉を贈りたい。ありがとう。

photo 聞けば、テントの業者などが、嫌な顔ひとつ見せることなく、作業を手伝ってくれたとのこと。そんな話を聞くにつけ、他の人間を思いやる気持ちの重要性を感じる。ところが、会場からほぼ1日で仮説トイレに準備したほぼ全てのトイレットペーパーが盗まれ、PAを担当していた人のバックから財布の中身だけが盗まれ、友人の写真家の荷物が盗まれ... 枚挙にいとまのない犯罪がここで繰り返されていた。

photophoto

photo 主催者側の不備は確かにあっただろう。ウェッブを運営し、フェスティヴァルに向けて一般の人たちに様々な情報を流し続け、助言を与えてきた立場からも批判すべきことはある。が、同時に、一部の観客のあまりの無防備、マナーの悪さ、他の人に対するいたわりや気遣いの欠如に対しても正当な批判が行われるべきだろう。それがなければ、どれほど設備の整った会場であろうと、フェスティヴァルは成功しない。フジ・ロック・フェスティヴァルのホームページが生まれて以来、そのトップ・ページに記されていたように、これは単に野外ロック・コンサートではなく、フェスティヴァルなのだ。それは、年に1度、音楽を愛する人たちが集まって、生きていることを祝福するセレブレーションでもある。それこそがまず最初に理解されなければいけないことのように思えるのだ。

written on the 16th August. '97

無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to Koichi Hanafusa.
They may not be reproduced in any form whatsoever.

back-



- Copyright (c) 1998 SMASH Corporation.
No reproduction or republication without written permission.