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Jul . 5
1999
FUJI ROCK FESTIVAL 97

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How 2 survive & Have fun !
'97 連載
新連載(仮) / 続・最終回 / 最終回 ? / 第7回 / 第6回 / 第5回 / 第4回 / 第3回 / 第2回 / 実 録

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HOW TO SURVIVE & HAVE FUN ! [1997.5.6]

第4回:俺は人間を信じるから

 だいたい会場に向かうのはフェスティヴァルが始まる前日というのがいつものパターンだ。たいていはヒースロー空港のそばでレンタカーを借りて、(というのも、取材が終わったら、即座に日本に帰って原稿や写真を入稿しなければいけないのでこれ が一番便利なのだ)友人の写真家、ミッチ池田をノッティング・ヒルあたりでピック アップ。そのままベイズウォーター・ロードを西に進み、サマーセット方面へ続く高速道路、M4を目指す。そして、M4の途中で南下し、バースを目指す。さらに、バースから目的地のグランストンバリー(正確にはシェプトン・マレット)に向かうのだ。

traveler photo  実際に会場に入るのは初日が多いのだが、その道程ですでにグラストンバリーが始 まっているのが面白い。M4の主要インターチェンジ辺りでは「グラストンバリー」あるいは「WEST」と書かれた段ボール紙を持った人々がヒッチハイクをしようと待ち構えているし、主要インターチェンジからシェプトン・マレットに向かう道には時折警察官が車を止めては持ち物をチェックしている。何をチェックしているか… もちろん、ドラッグのたぐいだ。好むと好まずにかかわらず、マリワナからスピードなどを持ち込む人がたえないからだ。さらには、最近ではショットガンなんて物騒なものを 持ち込んで犯罪を起こそうとたくらんでいるばかもいる。

 初めてここを訪ねたときには、もちろん、こんなことはなかった。マリワナぐらいなら当然とは思うけど、犯罪をにおわすものなんて全くなかったし、小競り合いも、 ケンカもなかった。誰もが他人を助けるような空気のある、文字通り、ピース・フェスティヴァルだったからだ。ところが、大きくなるにつれて、都市の喧騒が会場にもたらされるようになっていったのだ。

「誰もそんなことは望んではいないんだ。でも、都会をここに持ち込むようになってくるんだよね。悲しいことだよ

 と、語っていたのは、会場となる農場の持ち主で、主催者の農夫、マイケル・イーヴィス。それは仕方がないんだろう。ただ、美しいと思うのは、初めてマーケットの店がショット・ガンで襲われたとき、それを聞き付けたビリー・ブラッグが被害者のために突然チャリティ・ギグを会場の片隅で始めたことだった。困っている人がいたら、それを助けようとする人がいる。美しいと思うな、こうゆうの。

 どれほど美しいものを形作ろうとしてもすべてが完全になるわけではない。グラストンバリーに行った日本人からよく聞くのは。「カメラを盗まれた」とか、「財布をとられた」って話の数々。でも、よく聞けば、誰もいないテントにカメラをほったらかしにしていたり、ドラッグを買うのにディーラーの目の前で大金の入った財布をこれ見よがしに見せびらかしたり… 要するに、自分に責任を持って行動していれば、 そんなこともなかったはずだ。実際、高価なカメラやビデオ・カメラなどの取材器材 を会場に持ち込んで活動をしている僕らがそんな被害に遭ったことはないのだから。

 さて、当日会場に入るのはいつも早朝と決めている。でないと、信じられないほどの交通渋滞に巻き込まれるからだ。なにせ、当日の交通規制もとんでもない規模なのだ。僕らのような取材陣はバック・ステージの駐車場に車を入れることになっているのだが、そのための駐車許可証を車のフロント・ガラスの内側に張り付けなければいけないのが会場に近づく10マイル(約16KM)程手前。そうでもしないと、車がスムーズに流れなくて、大変な混雑になってしまうからだ。おそらく、今回のフジ・ロック ・フェスティヴァルでも同じようなシステムがとられるはずだ。現在のところ用意されている駐車場のスペースはわずか3000台分。現在、スマッシュが地元の業者に交渉を重ねて、近所の駐車場スペースを借りることになるのだろうが、そこまでうまく車を誘導しなければいけない。残念ながら、その場合、駐車場が会場のすぐそばだとは限らない… というよりは、遠いと思っていたほうがいいだろう。だから、その駐車場ごとにパスを作り、車を誘導することになるはずだ。車で来る人はそれを覚悟しておいて欲しいと思う。

 そして、会場に近づくにつれて、気分が盛り上がってくる。いつもこんなときにカーステレオに入れてしまうのが、なぜかジミ・ヘンドリックスかサンタナのテープ。 ただの懐古趣味なのかもしれないんだけど、会場入りのBGMにはいつもこんな音楽が 最高なのだ。そんなロックを聴きながら向かうのがチケットやパスをチェックするゲート。不思議かもしれないが、われわれプレス関係者もチケット代を払わなければい けないのが、グラストンバリーだ。ゲートでプレス用のチケットを渡し、リスト・バ ンドを受け取る。これは一度つけたら、ナイフかなにかで切らなければ絶対に切り離せないという代物。これを持っているかぎり、何度会場に出入りしても大丈夫というシステムだ。今回のフェスティヴァルで2日用のチケットがなぜひとりの人間でしか 使えないかというとこれが理由。2日用のチケットを持っていても、もらえるリスト・バンドは一つだけなので、その点は十分に注意しておいて欲しい。それと、いくら チケットに金を払っていても、このリスト・バンドをなくせば、どうあがいてみたと ころで、絶対に中には入れなくなるので、それも注意しておいてもらいたい。

 そのゲートで持ち物チェックがあるんだろうなと思うかもしれないが、それはない 。なぜなら、そんな作業をしていると、交通渋滞がひどくなる一方なのはわかってい る。それならば、会場に来る人々を信用すべきじゃないかというのが基本的な発想だ 。実際のところ、イギリスで通常のライヴを見るときにバッグをチェックされること がある。でも、これはカメラやテープ・レコーダーを持っているかどうかをチェックするのではなく、ナイフやガンを持っているかどうかとチェックするため。それほど 凶悪犯罪が多くなっているということの証なのだが、グラストンバリーにそれはないし、会ってはならないのだ。

 そんな流れを受けたわけではないのだが、フジ・ロック・フェスティヴァルでは観客の荷物をチェックするのはやめようということで動いている。大将にいわせるとこうなるのだ。

「俺は、客を信じるから。最初から客を不振の目で見るのは良くないよ」

 と、いうことは、カメラを持ってきたければ持ってくればいいってことだ。なにせ 、ここフェスティヴァル。ただコンサートの会場ではない。友達と、家族と写真を撮 ることが悪いとは思わないし、ライヴの写真を撮ることが悪いとも思わない。もちろん、それを商用に使えば、問題がある。が、自分で撮影した写真を自分で楽しむのは 固有の権利だし、それを止めるのは、本来、おかしいことなのだ。もちろん、暗くな って照明の効果が重要な意味を持ってきたときにフラッシュをたかれるのは困る。演出上の問題があるし、うるさくて仕方がない。それはやめてもらいたいけど。それに テープ・レコーダーだって、悪いとは思わない。ステージで音楽が鳴っていないとき 、音楽を聴きたい人だっているだろう。寝るときにテントの中で音楽を聴きたい人だ っているだろう。それを邪魔するなんてできるわけがない。

 ただし、荷物チェックはしない方向ではあるけど、絶対に持ってきてもらいたくないものもある。法律で禁止されているドラッグ類は、当然として、(だって、マスコミはそれを待っているんだから。こんなフェスティヴァルをたたきたくてうずうずしているに違いない。連中に格好のえさをやるのは嫌だし、それで来年の開催が危うくなるのが目に見えているじゃないか)ビンや缶類の持ち込みはご遠慮願いたい。できるだけ自然を損なわないでいたいということと、ごみを増やしたくないこと、時にビンなどは破片でけが人が出る可能性が高いことなど、いろんな理由がある。できれば 、はだしで遊んでいても大丈夫なような環境を作っていきたいので、それはお断りするように決定している。加えて、ハードなアルコール類も禁止だ。みんながハッピーになりたいときに、馬鹿丸だしの酔っぱらいのために雰囲気をめちゃくちゃにされる こともよくある。まぁ、のんびりいきましょうや。それがフェスティヴァルっていうものだ。

 いろんな規制をして申し訳ないとは思う。でも、今回を成功させなければ、(単に興行的な意味じゃなくて、地元の人たちが喜び、参加した人たちが喜び、気持ちのいいフェスティヴァルを形にするって意味なんだけど)来年はできなくなるという現実 が主催者側にはあるんですよ。だから、今年はなんとしてもそういった意味での成功をさせなければいけない。そのあたり、充分理解してちょうだいよ…
 
ってなことで、連載の?回目かな?が終わりを告げて、次回に続くのだ。では!

written on the 6th May. '97

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