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Jul . 5
1999
FUJI ROCK FESTIVAL 97

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How 2 survive & Have fun !
'97 連載
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HOW TO SURVIVE & HAVE FUN ! [1997.6.6]

第6回:抜けるような空が気持ちいい

 なぜかグラストンバリーに行くと怠け者になる。昔は大忙しに会場中を走り回っていたのだが、ここ7〜8年はそれもやめた。なぜか? う〜ん、なぜなんだろう。 その昔は、誰も取材に来なかったから… っていうのが、理由かな。なにせ膨大な会場で繰り広げられていることを、そして、どれほど素晴らしいことがここで起きているかをできるだけ日本に伝えなければいけない… いわば、取材を始めた当時は、そんな使命感があったからだろう。 まずはステージでくり広げられている音楽がある。といっても、これだって、大変だ。まずは、3年前に燃えてしまったピラミッド型のステージに代わって、今ではフェスの時期に特設されることになる大型のメイン・ステージがある。そして、今ではNMEがスポンサーとなってNMEステージと呼ばれるようになったサブ・ステージがある。

photograph (c)Koichi Hanafusa 今でこそこのふたつはわずか15分もあれば移動できるのだが、80年代の半ばまではサブ・ステージに移動するだけで30分を要した。といっても、今が楽かといえば、そうでもない。当時からあったアコースティック・テントに加えて、ジャズ&ワールド・ミュージック・ステージもあるからだ。一般的なロック雑誌なんかはメインとサブをフォローしているだけだから、(それでフェスのレポートだなんていうなよな、はっきり言わせてもらうけど。本当にグラストンバリーを取材したかったら、最低写真家3人、ライター5人は必要なんだから)まぁ、それほど苦しくもないだろうけど、勢いのある新しいバンドや癖のある面白いバンドは、どちらかというと、アコースティック・テントやジャズ&ワールド・ミュージック・ステージにでることが多い。このふたつを無視して、フェスティヴァルを取材したとは言えないというのが本当の所。というので、会場に着いたら、まずはプレス・テントで情報を仕入れて、時間割を作ることになるのだ。

 が、面積を考えれば、会場で音楽のために使われているのはわずか10%ほど。実をいうと、ステージなんかよりもっと面白いものがいっぱいある。これを取材しなければ、フェスティヴァルの意味が伝えられないのだ。サーカス・テントがあり、シアター・テントがあり、マーキー・テントがあり、環境保護をアピールするために作られている会場最高の場所、グリーン・フィールドには自然を愛する人たちのステージがあり、テントがある。なにせ、ミュージシャンから、シアター・グループ、サーカスから、会場のどこにでも出没する大道芸人からバスカー(ストリート・ミュージシャン)まで含めると、プロ(それで飯を食っていて、ある種の知名度がある人)だけで約1000人が出演するという噂も聞いた。もちろん、アマチュア(自分でチケットを買って会場に入ってきた人)なんかも含めれば、ここに集まってくるのは1000人どころの騒ぎではないのだ。メイン・ステージからジャズ&ワールド・ステージに行く道すがら、突然芝居を始めるグループに出くわしたり、産業排気物ってぇのか、粗大ごみを使って、マッドマックス並の超未来アート的な造形物を作っている集団、ミュートイド・ウェイスト・カンパニーなんぞというパフォーマンス・グループも暗躍している。ちなみに、彼らに惚れ込んで、イギリスからオーストラリアのシドニーに移住して、同じようなことを始めたのが友人の写真家、アンディ・リゲス。今じゃ、ミッドナイト・オイルのほぼ専属カメラマン(もちろん、他の仕事もいっぱいしているけど)のような仕事をしているのだが、その彼がメジャーのアーティストで儲けた金をこんなことに使って活動している。本当の気持ちをいうと、できれば、フジ・ロック・フェスティヴァルにも彼の「粗大ごみ車によるゴジラ」制作で来日させてやってほしいもんだ。

photograph (c)Koichi Hanafusa (例によって、再び話がそれてしまったのだが)ともかく、ここには取材しなければいけないものがてんこ盛りであるのだ。ここで出展しているオルタナティヴ系の店の数々。これだって面白い。サイケデリックなTシャツを専門に売っている店、おサイケなローソクを売っている店、焼き物、ケルト模様のアクセサリーや敷物、チベットあたりから仕入れてきたような民族衣装やアフリカン・アート…、普通の町中じゃなかなか見つからないような、癖のある(個性的な)グッズを売っている店がいっぱい出展しているんだよ。そういえば、ここで一度皮ジャンを買ったことがある。なんかネイティヴ・アメリカン(いわゆる、インディアンね)的なデザインで、ちょっと皮のなめしが甘かったので臭いがきつかったけど、かっこいいんだな、これが。しかも、こういうのって、フェスの最終日あたりに(残っていれば)値切って買えば、かなり安く買えるのだ。ウィンドウはないけど、一種のウインドウ・ショッピング的な遊びだってやっていると楽しくてたまらない。はっきり言って、時折、ステージで展開しているライヴよりもこっちの方が面白く感じることがある。

 それにレストラン。たいていは、レストランといっても、テントで調理器具を持ち込んで作ってくれているのだが、いろんなものがあるからな。メキシコ、中国、日本、フランス、イタリア、インド、ジャマイカ料理から有機野菜を使った完全オルタナティヴなヴェジタリアン・レストランまで。言っておくけど、みんなうまいぞ!ヴェジ・バーガーとか、(みんなマクドナルドに代表されるハンバーガーの大手が大嫌いで、会場にはそれに反対するキャンペーンTシャツなんかもいっぱい売っている)オルタナティヴ・ヴェジ・カレーとか... 思い出しただけでよだれが出てきそうだ。それにとうもろこしの炭火焼きとか揚げたてのドーナツとか...

 あと、いろんなキャンペーン団体もいっぱい来てるよね。今では基金作りの恩恵を受けているグリーン・ピースや、今もやはり生きているCNDから、労働党の人たちとか、化粧品や贅沢さと富の象徴って理由だけで生産される毛皮に反対する動物愛護運動の人たちとか...そんな人たちが自分たちで作ったグッズを売ったり、アピールをしたり。勉強にもなるし、日頃のメディアで得られない情報をこんなところで入手することもできるのだ。 まぁ、日本で言えば、諌早湾の問題とか、「何とかしなければ」と思うことがあるじゃないですか。めちゃくちゃな話ですよ、あれって。面白い話があって、あれが報道されてから、農林水産省のホームページにメールが送れなくなったんだって。というのは、あまりにもたくさんの人たちが抗議のメールを送ってパンクしたって説があるんだけど、「ざまぁ見ろ!」って気持ちだよ。今、この時点でそのアドレスはわからないけど、チャンスがあれば、どんどん抗議のメールを送ろうぜ!だって、あんなこと、許せるかよ。

 申し訳ない、また話が横にそれてしまった。

 でも、沖縄の基地の問題(=沖縄の特別措置法のことさ!)(沖縄は日本の植民地じゃないぞ!)薬害エイズの問題..頭に来ることっていっぱいあるじゃないか。そんなことをアピールするのに、フジ・ロック・フェスを使ってもらってもかまわない。もちろん、チケットは買ってもらうよ、会場に入ってくるのに。(だって、みんな働いているんだから)でも、その上で、会場にテントを作って、こんなことをアピールしたいんだとか、「僕らはこう言った問題を考えなければいけないんだ」と真剣に考えている人がいたら、スマッシュの大将に相談してよ。あいつ、いい奴なんだから。絶対に相談に乗ってくれるよ。(まぁ、怒涛のようにそう言ったメールが来たら、対処のしようがないという現実もあるので、そのあたりは理解してもらいたいけど)ともかく、今回のフェスで、本当に優しい気持ちを持った人たちが集まって、つまらない世の中をちょっとでもましな風にできるようなことをしようよ。

 あ〜あ。また、話が横道にそれた。

photograph (c)Koichi Hanafusa ともかく、グラストンバリーのなにが面白いかといえば、でっかいステージで演奏されている音楽だけじゃなくて、そんな、もろもろの、ちっぽけな人間の、良心が見えるものがいっぱいあるってことなんだ。だから、会場についても、真っ先にステージ前に走っていく馬鹿なんていないし、これみよがしに「場所押さえ」をするノータリンもいないわけさ。

 ちなみに、今回のフェスティヴァルでは、なんにもない敷地に、ステージ前から、柵を作って、観客を家畜のように分け隔てなんてしないからな。もちろん、安全を守るためにステージ前にピットは作るよ。プレス用に写真を撮る写真家もいるだろうし、そこにセキュリティ・ガードをおいて、最前列で後ろの客に押しつぶされそうになって気分の悪くなった人を救い出すためのスペースも必要だから。でも、観客を、そう、人間を信用しないで、家畜のように扱う一般的な野外コンサートなんて「糞食らえ!」と思っているのが、僕ら、主催者側。あんな規制なんて、絶対にしないから。みんなが前の方で見たいバンドがいれば、前に来ればいい。そうでもないバンドだったら、後ろで見ればいい。僕らはそういった発想をしているんだ。

 ただ、おそらく、会場に来たらわかるよ。そんなに焦って、なにが楽しい音楽なんだって。ワイルドに暴れたい音楽もあれば、後ろの方で景色を一緒にのんびりと楽しみたい音楽もある。まぁ、今回は僕の見たかったニール・ヤングもエルヴィス・コステロもヴァン・モリソン(この人は、絶対に日本に来ないような気がするけど)もビリー・ブラッグ(彼はコステロと同じように魅力があると思う)も、ブルー・ナイルも(来日中止が悲しくて、悲しくて)出演しないけど、こんな人たちをこんな場所で聴いてみな。めちゃくちゃ気持ちいいから。他のバンドだって、踊るスペースもないようなぎゅうぎゅう詰めで聴くよりは、ワイルドにダンスしながら聴く方が楽しいに決まっているし。

 まぁ、いろんな意味で、面白いからな。きっと、フェスが終わって、会場を離れるとき、あるいは、最後のバンドが演奏する時かな。絶対に思うから。「やったね、僕らはすごいフェスティヴァルを体験したんだ」「一緒に、僕らがこのフェスティヴァルを作ったんだ」って。これは、主催者、スマッシュのスタッフ、そして、それをサポートしている僕らだけじゃなくて、観客として会場に来ても、絶対にそんな気分になるから。それがフェスティヴァル。そう、僕らが生きていることを証明してくれるような、イヴェントなんだ。

 ってなことで、次はどんなことを書こうか?グラストンバリーと比較して、あるいは、それやフジ・ロック・フェスティヴァルを想像して、なんか、僕に書いてほしいことがあったら、連絡ちょうだい! それをテーマにここに書いてみるから!

 それじゃぁね!

written on the 6th June. '97

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