-
Jul . 5
1999
FUJI ROCK FESTIVAL 97

-
How 2 survive & Have fun !
'97 連載
新連載(仮) / 続・最終回 / 最終回 ? / 第7回 / 第6回 / 第5回 / 第4回 / 第3回 / 第2回 / 実 録

Prev FRF98

Prev FRF97


Previous Fuji Rocks

HOW TO SURVIVE & HAVE FUN ! [1997.7.13]

第7回:出かける前に絶対読んでね!

 フェスティヴァルまであと2週間を切った。毎日毎日深夜(2時や3時までだよ!)まで働いているスマッシュのスタッフ、大将、ウェッブを運営しているokada君や僕、そして、チケットの発送などをしているホットスタッフのみんな、会場でステージやレストランなどいろんな設備設営のために働いている人々、地元の人たちや会場に行く準備をしている誰もが期待と不安を抱えて今を過ごしていると思う。なかには忙しくてそれどころじゃないって人もいるかもしれないけど、日本で初めてこんな、とんでもないイヴェントを形にしようとしているんだもの。心配で当然。不安で当然。でも、なんとかなるものさ、最終的には。みんなそう思っている。

 例えば、この連載の第1回に書いたでしょ? このフェスティヴァルを大将が始めようと言い出したとき、僕自身をも含めて誰もが「やめときましょうよ」って言ってたこと。「フェスティヴァル経験のない日本じゃ、設備もなにもない不便な場所にわざわざ客が来るわけないじゃないか」という人もいれば、「これだけ大規模なイヴェントをやるには1年ぐらい前から宣伝始めないと...」とか、「これでスマッシュは倒産だ」って真剣に言っていた人もいたんだから。でも、蓋を開けてみれば、とりあえずはほぼ赤字にはならないような状態にはなった。なんとかなるじゃないか。

 まぁ、収益がでそうになると、やれ「サウンド・システムを作ろう」とか、「映画の上映をやろう」とか言い出した大将には喜んでいいのかどうかちょっと疑問もあるけどね。(しかも、なにかとんでもない企画も考えているよ、この人。誰にも発表していないけど)だって、そんなことをやってりゃぁ、どう考えたって、このイヴェントじゃ儲からないから。というよりは、儲けることを拒否しているようにも思えるんだもん。でも、ま、いいか。金のためにしのぎを削っているよりは、面白いことをど〜んとやる方が楽しいもんな。それに、大金をはたいて、懸命になって会場までやってくるみんなが、そして、スタッフが金じゃぁ手に入れられないものを体験できる方が嬉しいもん。

 ただ、今の時点でもはっきり言えるのは、巨大なスポンサーの看板なくして、実際にフェスティヴァルが開けるようになったのは、なによりもチケットを買ってくれたみんなのおかげだってこと。それがスタッフや大将や僕らを動かしているというのは確かだろうね。これはすごいことだよ。金、金、金... そんなものでしかイヴェントなんて成り立たなかった日本で、「本当に音楽が好きな人たちが、自分たちの身銭を削って、時間を使って」作っているのがこのフェスティヴァル。まるで夢のようなことが現実になろうとしているんだから。

photo 繰り返すことになるけど、おそらく、問題はいっぱいあると思う。グラストンバリーだって、もう25年もフェスティヴァルをやっているのに、不便なことこのうえないんだから。例えば、交通の便。車で来る人、電車やバスを乗り継いでくる人、そして、ヒッチハイクで来る人... 今年もロンドンからM4という高速道路にのるときにヒッチしているカップルに出くわしたし、主要なインターチェンジには必ずそういった人たちがいたものだ。実際、フェスティヴァルじゃないときに、会場の農場を訪ねて主催者のマイケル・イーヴィスにインタヴューした時なんて、彼の家に行く方法がなくてめちゃくちゃ困った記憶がある。まぁ、今じゃ主催者と長いつきあいがあるから、僕と仲間のミッチ池田はいつもレンタカーを借りて行くことにしているけどね。なんとかプレス・パスをもらえるし(これだって簡単じゃないし、通常よりも高いチケット代を払わなければいけないんだけど)、通常は入手できないバック・ステージへの車のパスも受け取っているから。でも、一般の人たちはたいへんだと思う。駐車場から会場の入り口まで重たい荷物を持って30分やそこら歩くのは普通だし、バックパックにいろんなものを詰め込んで長い道のりを歩くこともある。それが普通なんだ。

 コインロッカー? そんなものどこにもあるわけがないじゃない。そんなことを考えるのは日本だけだよ。だいたい貴重品なんてのはいつだって身につけてなきゃいけないし、フェスティヴァルを楽しむのに、いったいなにが必要なんだろう?これはグラストンバリー・フェスティヴァルのレポートにも書いたけど、取材の度に思うのは、カメラもビデオ・カメラも、テープ・レコーダーもコンピューターもな〜んにもなしで遊べたらどれだけ幸せだろうかってこと。そんなもの持っていかなければいいんだよ。必要最低限のもの、例えば、絶対に必要なトイレット・ペーパーや寒くなったときの防寒具や懐中電灯... 野宿するなら、スリーピング・バックぐらいはあった方がいいだろうけど。その昔、バスの駅のベンチで寝たこともあるから、なんとか寒さをしのげれば、それで充分だ。(これは、ヨーロッパ、しかも、かなり危険と思われるスペインを放浪していたときに経験)女の子のひとりじゃ恐いというなら、信用できる仲間と一緒に寝ればいい。雨が降るかもしれないから、最低限の雨具はあった方がいいかもしれないけど、そんなことにでもなれば、突如として雨具屋さん(ちょうど今回のグラストンバリーの長靴屋さんみたいなもの)が登場するだろうし、そんなに気にすることもないだろう。まぁ、どれほど暑かったって、高地なんだから、夜は寒いからね。ちょっとしたジャケットとか、トレーナーとかは絶対に必要だけど。食料品だって、夏なんだから、下手なものを持っていったら腐っちゃうよ。重たい飲み物を持って行くよりは、会場のレストランやバーじゃ、充分なものを用意している。こんなイヴェントをほとんど利益なしでやってしまおうっていう連中が集まってレストランやバーを運営しているんだから、法外な値段は付けないだろう。身軽になって、パ〜っとやるのが一番だよ。

photo 日本だからこそ、それなりのトイレも用意されるけど、グラストンバリーのトイレはすごいよ。みんなに見せようと思って写真まで取ってきたけど、みんなここでウンコしているわけさ。これがとりわけ汚いわけじゃなくて、今年はあの泥の海のおかげでバック・ステージにほとんどバキューム・カーが入ってこれなかったから、バックステージのトイレじゃウンコが山盛りになっていたもんな。これ、笑えないよ。臭くて臭くて吐き気がしたから。だから、イギリスの女の子って、中腰でオシッコしたり、ウンコするのになれているんだって。笑えるような、生活の知恵と誉めてあげたいような... そんなものだよ。

photo 病人だってでるかもしれない。そんなときは、みんな協力してね。会場がかなり高地にあるから紫外線だって強いし、晴れたら日射病にだってなるかもしれない。特にステージ前に押し寄せて呼吸困難になる人もいるかもしれないし、脱水症状になる人もいるかもしれない。そんなときには、どんなド派手な演奏をしていても、大声で助けを求めてね。グラストンバリーじゃ、これで一度死んだ人もいたんだから。意味がわからないかもしれないけど、そんなオーディエンスから引き抜かれたときには、その女の子の心臓が止まっていたんだよね。でも、ヘリコプターやら緊急救助の人たちが大急ぎで処理をしたら、病院で息を吹き返したんだとか。これ、本当の話だから。でも、この時、ほんのわずかの時間でも手当が遅れていたら、彼女はグラストンバリーで死んでいたかもしれない。そんなことがないように、みんなで助け合ってちょうだいね。富士の麓のロック・フェスティヴァルで死ぬなんて、シャレにならんぜ。

photo ゴミだって、できるだけ出さないでね。だって、草の上にの寝っ転がってのんびりと楽しみたいじゃないか。ゴミがあったら、指定の場所に捨ててちょうだい。煙草の吸いがらも携帯用の吸いがら入れを持ってくるとか... 当日は、ヴォランティアの人たちが、そして、スタッフがゴミを集めていると思うから、そんな人たちを手伝ってちょうだいね。


 あのアーティストを出してちょうだいとか、なんでふたつのステージで同時にライヴが進行しているのかなんて、いわないでよ。そりゃぁ、僕だってねぇ、出て欲しいアーティストはいっぱいいるよ。smashing magにレポートしているけど、ベン・ハーパーなんて、こんな場所で見たらめちゃくちゃいいと思うよ。コステロだって見たいし、ニール・ヤングだって見たい。そんなの、無限にあるもん。それに、グラストンバリーじゃ、プロデジィとマッシヴ・アタックとリーフとオーブが(金曜日)、それに、レイディオヘッドとクーラ・シェイカーとデヴィッド・バーンとプライマル・スクリームが(土曜日)、そんでもってアッシュとブルートーンズとユッスー・ンドゥールとダフト・パンクが(日曜日)に同時に演奏していたんだよ。どうする?身体が4〜5個は必要だもんな、正直なところ。それがフェスティヴァルってものさ。今回、富士に特設するステージはわずかふたつ。でも、グラストンバリーじゃステージが6つあって、それぞれの距離が歩いて最低30分もかかるんだから、富士の方が断然楽だもんな。

photo なんかやたらと要望が多いかもしれないけど、(あるいは、説教臭いかもしれないけど)基本的には大人も子供も、みんなが気持ちよく過ごせる場所を作り多いってのが僕ら、フェスティヴァルを作っている人たちの夢なんだ。そして、おそらくは、会場にやってくる人たちの夢でもあるような気がするんだ。誰にもできなかったことを形にするために、一番必要なのはみんなの力だと思うんだ。

written on the 13rd July. '97

無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to Koichi Hanafusa.
They may not be reproduced in any form whatsoever.

back-back



- Copyright (c) 1998 SMASH Corporation.
No reproduction or republication without written permission.