
Fuji Rockin' People Vol.1 --奥野竜太郎氏--Part2
【北京ライヴ事情】
――奥野さんといえば、中国ロックとの関わりですが現状は?
「98年頃からロックが解禁されてきました。それまでは「精神汚染音楽」として表で活動できませんでした。今では北京でも3つか4つくらいライヴハウスみたいなものがあります。キャパは100人以下ですね。日本でイメージするライヴハウスというよりはステージ付きのバーやレストランですね。」
――情報はどのように伝わるんですか?
「北京にはロックシーンがあってラジオや英字紙で情報を得ることが出来ます。あとはもちろん口コミです。よく留学生を集めたパーティが行なわれて留学生が集まれば外国人も集まるし中国人の進んだ人も来るっていう感じですね。何万人も集めるような大きなライヴは日本では知られていないような地方都市の体育館とかで行なわれることがありますね。」
――音楽的な傾向は?
「音楽的にはハードロック、ヘビーメタルが多いですが、スカコアやテクノや民族色の強いロックをやる連中もいます。バンドにDJ入ったのもいますが、まだちょっと質は低いかな(笑)。」
――ダンス系とかは?
「北京にオレンジというクラブがあってケン・イシイや石野卓球やヨーロッパの有名DJが回しに来ます。そういうクラブは上海とかにもありますね。クラブはディスコの延長で社交場として政府も認められています。それに対してロックは反抗的なイメージがあって、パンクのライヴではケンカが起こるし麻薬に結びついたイメージがあって政府はシビアですね。実際はクラブやディスコとロックの差は大してないと思うんですけどね。」
【中国音楽の現在】
――CDなどの流通は、どのような感じでしょう?
「CDも出回っていますが、まだまだカセットが中心です。CDが1000円を超えますがカセットは150円くらいで手に入りますから。海賊盤がすぐ出回るのが問題ですね。海外のロックも留学生が持ち込んだりで手に入ります。かなりマニアックなものを聴き込んでいる人もいますよ。あと、MTVみたいのもありますし、ウッドストックやフジロックの存在はビデオで観ていて、ロックをやる連中はみんな知っています。また、日本のドラマは翻訳されて放映されているんでドラマに使われた主題歌はヒットしますね。宇多田ヒカルなんかは普通に聴かれています。日本のミッシェルガン・エレファント、マッド・カプセル・マーケッツ、ブラフマン、ドラゴン・アッシュなんかも知っている人は知っていて、崇拝している人やコピーしている人もいますよ。」
――北京以外の都市では?
「上海とかの大都市でもCDとかカセットは手に入りますが、楽器の店が少なくて、ロックをやろうという雰囲気ではないですね。まあ、経済の中心地で裕福で余裕があって、気性が大人しいということもあるのかもしれません。それに対して北京は政治と芸術の中心地でハングリー精神があって、何かをやろうという雰囲気がありますね。北の人は気性が激しいというものあるでしょう。」
――お勧めのバンドは?
「夜叉というバンドでハードコア系の音を出します。日本人がギターじゃなかったっけ?それと日本のロリータ18号のレーベルからCDを出しているHang On The Boxというガールズ・パンクのバンドがいます。」
――もっと交流が増えると良いんですが・・・
「中国人が外国に出るのは大変なんですよ。どこの国に行くにもヴィザが必要だし、パスポート取るにも都市の人じゃなきゃダメとか年収いくら以上とかの制限がありますし。申請も半年から一年かかることもあります。去年のTHIN MANも厳しかったです。話があったのが6月末くらいでギリギリまで行けるかどうか分かりませんでした。」
――最後に一言。
「THIN MANのニューアルバムのデモテープを聴いたんですがいい出来です。曲もバラエティに富んで民族的なものもあります。また、天安門事件について歌ったものや禁止用語を叫んだものもあるんで、中国で発売できるかどうか分かりませんが。今年もフジロックに出られるといいですね。」
Part1/Part2
reported by ORG-nob (June 16 2001)
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