
Around the Fest.1--小野島大氏--Part4
【インターネットと音楽の関係】
――インターネットによって音楽の聴き方が変わったことはありますか?
「インターネットで音楽の聴き方が変わったとは思わない。これは、音楽に限ったことではなくて、同時テロ事件のときに強く思ったことなんだけど、今までは世界中にいろんな意見があったけど、それが表面にはなかなか出てこなかった。新聞やテレビは権力側に都合のいい情報しか流さないし。でも、今なネットがあるおかげで、いろいろな情報を共有できるし、多様な意見がみんなの目に触れるようになっている。画一的な情報操作ができなくなってる。アメリカは正義ということになっているけれども、必ずしもそうではないし、そう考えていない人が多いというのが分かる。
そういう意味でネットは価値がある。もちろん悪いところもあるけど。ロッキンオンやクロスビートが必ずしも全面的に信用できるとは限らない、いわば大本営発表みたいなもんだということに気づいたんじゃない? 『ロッキンオンで誉めているけど、全然つまんねえよ』という意見はあって当然だし、それが堂々と表に出てきた。既成のメディアは結局レコード会社の金でがんじがらめになっているんじゃないかということに、みんなが薄々気づき始めた。じゃあ、音楽雑誌いらねえや、情報を拾うならネットで十分だという話になる」
――その中でご自身の役割は?
「ネットに出来ることと出来ないことがあって、普通に考えれば、速報性や情報の多様性やインタラクティヴ性はネットが有利だけど、長文テクストを読ませるとかキレイな写真とかは雑誌の方が上ですね。俺も自分でサイトやってるけど、やはり紙の雑誌できちっと読ませるような記事を書いていくのが俺らの仕事かなと思う。そうすると必ず『評論家なんて要らねえよ』という奴が出てくるけど、要らないなら要らないで結構。でも、そういうのを読みたがる人もいるし、俺自身もそういう優れた評論文に触発されたし、音楽の聴き方が変わるということもあったから。
フジロックの1年目、ものすごい批判がスマッシュの掲示板に殺到したとき、書かせるままにしたスマッシュは大したもんだと思う。日高さんもネット上であれこれ釈明したりしなかったけど、ちゃんと2年目以降に経験を生かしたわけだし。スマッシュのいいところは自由にさせてくれるところだから、それをわれわれがどう活かすか。
掲示板とかは、批判のための批判やデマカセや面白がって悪口を言うのもいるから全部が全部容認するわけにいかないけど、いろんな人の意見が、誰の目にも触れるように明かされるようになったから、批判的な意見を黙殺出来なくなった。ただの言いがかりか正当な批判かどうか個々で判断するしかないけど、不誠実な対応をしたら、たちまち叩かれることは確か。それだけ、それぞれの仕事に求められる基準は厳しくなってる」
Intro/Part1/2/3/4
Reported by ORG-nob (Feb 09, 2002)
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