「最後は善良そうなニュースキャスターがいますよね。その方に連絡をして『このフジロックの報道体制は間違っているから、そのことを扱ってくれないか』という話をしました。でもその方も逃げましたね。いっぺん報道されたものは修正することは難しいって言ったのですよ。『これが報道の自由』かとおもいましたね。いい経験になりました」
――(当時の記事のスクラップを見て)これ、凄いですね。熱中症の記事で「倒れない方が不思議」って書いてありますね。倒れているわけなくて寝そべっているだけですが。
「寝そべって音楽を聴く常識がないだけで、書いた人が間違っている。1年目の台風でいろんなことを学んだわけじゃない?それで全部記録取ろうと。で、救護所に来た人で一番多かったのは靴ずれで、バンドエイド2枚とかっていう人がいっぱいいた。それと元々体調が悪くて頭痛とか腹痛とか、あとは耳に虫が入ったとか、そういうのがほとんどなわけ。バンドエイドを渡したような人にも全員に名前を書いてもらった。そして救護受付でつけていた人数を消防に伝えて、消防の発表は公式発表だから、それが(熱中症で倒れた人が)1000人になっちゃう。それが一人歩きして通ってしまう怖さがある」(寺田さん)
「タイトルだけ見ると『熱中症で1000人倒れた』だったりしますが、内容を熟読すると、ちょっと違ったりして、タイトルはフレームアップされています」
注:98年のフジロックでは、救護所の医師が熱中症と判断したのは2日間で4人、そのうち救急車で運ばれたのが2人。会場に約3万5000人いてそのほとんどの人が普通に帰ったのだが。
「非常に嬉しかったのは、熱中症とは書かれつつもフジロックをねぶた祭りと一緒にしてくれた大きな記事があるんですが、『フジロックはねぶた祭りと同じ次元の祭りなんだ』って、まだ2年目なのに、一緒に出させてもらって嬉しかったです。
豊洲のフジロックのときは梅雨明け宣言の初日とぶつかって『夏始まる』という記事を作りたかっただけなのです。豊洲でロックのイベントがある、当然人が倒れているだろう?と社会部の記者は非常に都合のいい状況があったわけです。本当はフジロックの記事でなくて梅雨明け宣言のネタのひとつや熱中症に気をつけようという記事が実態なのです。
この後、非常に力づけられたものがありまして、アメリカの媒体なんですが『ナイトリッター新聞グループ』という日本で言えば共同通信や時事通信みたいなアメリカ国内に地方紙にニュースを配信するところがあります。そこがフジロックを取材して『世界一クリーンなフェス』という記事をアメリカ国内に流してくれました。それが一連の報道をひっくり返す最大のこととになりました。この年、ウッドストックが復活して、いろんな問題があって、記者の方はウッドストックとフジロックを比べて、ごみ一つなくて食べるものを含めてちゃんと管理されていると、と書いてくれたことが僕に自信を持たせてくれました。実際、世界一クリーンなフェスですし、『ウッドストック』の映画を観れば分かるとおり、後半はごみの山でしたね。フジロックは1年目の反省もありますし、そこから始まっているから当然です。
プレスの人に『あなたの報道に関して同意も賛同もしません、記事を書くのはあなたの自己責任によるものですよ』と言っています。参加者に自己責任を求めておいてプレスに対しても自己責任を求めないのはよくないと。こういうことを音楽イベントではあまり言ってないのでは?」
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