
Fuji Rockin' People Vol.9 --岡田美和氏--Part4
【どっぷり溺れちゃうくらいロックに浸かった何日間、若い頃にそんな体験をしてみ たかった】
例えば、チケットもぎっているところから、ずっとこうトラメガを持って「何とかは何とかで、何とかは何とか出来ません、何とかの際は何とかで」って言っているやついるじゃん。ああいうの全部なくしたいね。本当に自由に集まって来て、自由に生活をしつつ、どっぷりロックに浸る生活、その仕事もせずに3日も4日も音楽と酒と空と星と川の水となんていう生活って出来ないじゃない?それを満喫して欲しいね。
スタッフというパスをつけた人に聞けば丁寧に教えてくれるんだけど、それを聞いちゃうということというのは、「今考えているんだから言わないで」って自分で答えを見つけて答え合せしたいときには聞いてくれれば大体のことは分かるけど、答えを持ってない人に「これが正解だから、それをやって」という言い方をしちゃいけない。来る楽しみが減るでしょ。お化け屋敷で何回も行っているやつが「ここに来れば怖いの出るから」って先に言ったら俺はそいつ殴るもん。映画を観ていて「あそこでゾンビが出るから」って言えば「うるさい黙ってろ」と言っちゃうじゃん。そういうことだと思う。先に答えを出すって言うズルをしないこと「いいから言うことを聞け」という言い方をしないことが上手く蔓延すればいいなと。
ホテルなんか無くていいしさ、まあ初心者はホテルだけど、上級者はキャンプ地で焚き火出来るんだったら、焚き火で何か食ったっていいわけだし。キャンプ地は終わって2日後くらいにはメンテナンスしたらゴルフ場としてやっているわけですよ。実際そこで焚き火は出来ないし、いろんな問題があるのだけど、もっとそういう風に自由が出来るといいな。
僕が目指していて、好きだなあと思いつつ、夢だなあと思うのは、どっぷり溺れちゃうくらいロックに浸かったまんまの何日間なんていうような――東京の自分の仕事のこととか昨日の宿題とかを忘れてしまうような――濃密な音楽漬けの何日間、埃っぽくて汗もかいて風呂も入れないかもしれない、酒飲みすぎて二日酔いかも知れない――そんな体験をしてみたかった、若い頃に。でも、そんなもんは無かったんだね。それをたまたまこういう好きでやっていたら、こういう仕事をやることになっちゃって、それを出来る日があったわけですよ。日高さんやいろんな人の出会いを大事にしたい。
だから「どうしたら良いんですか?」と聞かれたら「こうしなさい」じゃなくて、どう生き抜いて、どうロックを楽しんで4日間を過ごすのか、お客さん一人一人の楽しみ方と思っているんで。東京ディズニーランドのようなさ、スタッフじゃ無くてキャストって呼んで、お客さんじゃ無くてゲストって呼んでっていう、あんな感覚でマニュアルがあるような形、そんなことは僕は望んでない。
ロック・イン・ジャパンなんていうのは、実はおととしフジ(ロック)チームがやって、去年は僕は観に行ったんだけどね。実施要項とか見ても僕らが歩いて測量して、その公園の使用の仕方とかも僕らが提案して、それに準拠したものを作っているから、ほとんど僕らが残したものでやられているわけですよ。最初にそれをつくるのが一番難しかったんですよ。天神山で。
どんな原っぱ見ても日の出日の入りの向きと風向きと、どっから人が来てどっから人が帰るっていうのがあると、みんな巻尺持っていってイメージしますよ、この5年やったスタッフは。「ここ草刈れば、ここが道に一番良いよね」って朝霧のときも藪の中を「ここから人を入れようか」とか、みんなで歩き回ったわけ。それもまた楽しいんだよね。
なんだろうなぁ、だからもう野外でああいう仮設ステージなんだけど、やるバンドに対しては横浜アリーナとか武道館とか東京ドームでやるというのと変わらないインフラを用意してあげたいわけだよ。演奏に際する問題はね。それ以外に、それだけ素晴らしい自然があって環境があって彼ら自身もドキドキするわけじゃないですか。そこらへんの結びつき、上手くバランス取れていて両方を堪能できるお客さんっていうのは、幸せだと思う。
僕は10年やれたら後輩に全部渡して客で行こうと思っている。ジジィになっているから電車で行くと辛いから車で行くけど、一生懸命チケットを申し込んで駐車券付きキャンプ券付き3DAYとか買って、テント張って俺は観るつもりだよ。だからそういう日が来たらいいなあと、俺は思っているよ。
なんかこう仕事ってね、やってる仕事に対してさ夢がないと全然つまんないいわけよ。今日、ネジ500個締めればいいんだよっていうのを、俺は熟練したから500個じゃ無くて600個出来るんだよというチャレンジを残してくれなかったら、それは機械の一部であってつまらないわけよ。600個といったときに競争するようになって、精度が悪くなったり「誰が600個?私500やるのに」って比べられるものになってくと憤慨しているわけだよ。でも、こういうソフトウエアって比べようがないんだよね。
気持ちひとつじゃない?だから、やっている人間たちの顔色とか出るんだと思うんだよ。類まれなタフな現場なんだけども、簡単に言うと現場で機嫌が悪い、テンパっていて誰かにモノを言われたら「うるせー黙れ」とか言っているやつはいないんだよ。僕たちは本当にいい天気だったら喜べるし、いい天気だな頑張らなくっちゃと思うし、こういう天気ならお客さんも幸せだよねと思える日はそう思うし。雨が降ってきたら、埃が立たない程度に止んでくれたら良いのに、ってみんな思うし。
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Intro/Part1/2/3/4/5
Reported by ORG-nob (Feb 15, 2002)
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