
Fuji Rockin' People Vol.9 --岡田美和氏--Part5
この商売入って最初の頃思ったのは、人と人と人なんです。バンド、スタッフ、お客さん、みんな人。僕もお客さんで高校生くらいのときにはバンドをやっていたんです。プロにはなんなかったけど、みんなそういう好きなの、聴くのも好き、やるのも好き、観るのも好き、みたいな人が集まるわけです。ということは立場が違えば、その3者って、今ビッグネームのバンドだって5年前はあるバンドのボーヤ(ローディー)だったりする奴がいるわけだよ。その繰り返しなんです。輪廻みたいにね。僕らもその一端だし、バンドもそうだし、お客さんだって、もしかしたら5年後のスーパースターがいるのかも知れないし。立場変わんないんだよ。
好きなやつは好きなもん観たり、演奏するやつは気持ち良く、観ているやつは最高に気持ち良いし、スタッフでもこれが出来たことを幸せだと思うような、そういう感覚を持ってやれるものが日本には少なかったと思うんです。みんなが一致したのがフジロックだっったかも知れない。みんなが、フジロックは別だよ、あそこはいいんだよというのが、みんなの思いなんです。
僕だけが良いのではなく、日高さんだけが良いんじゃない、お客さんもバンドも込みで総意だと思う。そういう感覚を持てるから、そういうムードだから、ニール・ヤングが予定の時間の倍やったって「やめろよ」じゃなくて「あのクールなニールが笑っているぜ」ってみんな盛り上がれるわけだよ。「あのニールが笑った」ってみんなでドキドキ、そういうときはみんなファンだな。前から観れなくて、ステージの横から観てるわけだけどさ、そういう場に巡りあえることは楽しいよね。
チケットもね、日高さんはまだ高いくらいだ、もっと安くしろって言いまくるワケだよ。でもこれ以上安くすると、スタッフはひとつの布団に3人で寝るとか、そういうコストダウンしなきゃ無理っていうところまでギリギリに来てると思うんだよね。収益考えると。このあとどうすんだというときに、おれたちもキャンプする、テント張ってそれで行けるような余裕を持ちたいな。朝霧なんかは、そういうテストケースだと思って一回やってみたくて、それをやだと言わない人に協力してもらった。面白かったよ。
【いいアーティストが集まっていいショウをやってくれれば最高だな】
フジロックで印象的だったのは、やっぱり一番最初の今から客が入ってきた瞬間。夜半から雨が降って、これどうなっちゃうんだろうと思って始めちゃったとき。それと苗場を初めて見たときもドキドキしたしね。苗場で3回やってみたところで言うと、レイアウトが分かって、来るお客さんもそういうフェスティバルだって思ってくるようになって、ポピュラリティを持ってきたらやることが容易になってきたと。その最初の一つ目を作るっていう「やんねえか、みんなで」って日高っていう人はすごいなあと思うよ。そんな馬鹿なことを言う日本のプロモーター、ボスがいるんだって思ったとき、「俺だよ!俺よ!俺にやらせて!」と実は言って、自分で売り込んでいったんですよ。「いいよ、やってみようか」と言うわけで、一年目やったんです。そんなのが縁かな。それだから日高さんが、もう飽きたからいいよ、あの場所は好きじゃないとか言うけど「10年やって下さい」ってずーっと言い続けている。そういうこと。楽しいよ、こういう生活していると。
まだ目標の半分だからね。今年でやっと半分を越えるわけだからね。いいアーティストが集まっていいショウをやってくれれば最高だなっていつも思う。これはいつもだな。
追伸:
で、テープに収まりきらなかった話をひとつ。
「パティ・スミスは、自分のショウが終わったあと、ずっと裏に居てニール・ヤングを待ってたんだよ。パティ・スミスが『ハイ!ニール』って言ったら、ニール・ヤングがそれに応えて二人は抱き合ったんだよ。そしてニール・ヤングはステージに上がってたんだよ」。
Intro/Part1/2/3/4/5
Reported by ORG-nob (Feb 15, 2002)
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