――フジロックの期間はどのように過ごしていますか?
「3日間はずっと起きてます(笑)。ライヴはほとんど観ていない。2002年は前夜祭も
含めて4日間で4バンドくらい。陽水さんは初めて全部観ました。僕は1曲くらい観た
らもういいやって、どっか行っちゃうけど、全部観てね感動して涙が出そうになっ
た。何だろうなと。あとはプロディジーちょっと観て、ケミカル観て、こんなもんで
すよ。普段はDJブースで酔った勢いで乱入してDJしたりテーブルに友達が来たとき
に、なんかホストみたいなことをやっています。朝8時から酒飲んでます。仕事して
いるかというと、していない。していないかというと、している、という狭間でやっ
ています。
フジロックで泥酔している人がいないっていうのは、夏だからっていうのと、体動
かす、歩くっていうところだと思うのね。それとフジロックって学ぶんですよ。冷暖
房完備の世の中で、コンクリートの中で生活しているやつらが、暑いときは暑いんだ
よ。寒いときは寒いんだよって勉強しちゃう。3日間で長い人生の中で学んだことが
ないことを、みな学ぶのかなと。非常に貴重だと思う。フジロックって最終的には自
分のことは自分でやろうってあるじゃないですか。みんな依頼心があるのね。誰かに
頼もう、誰かがやってくれるっていう。だけど、誰もやってくれないって気がつく。
それは貴重な体験で、そのうえで誰か疲れている人がいると『大丈夫?』って、思い
やりと自分のことは自分でやることを学ぶと思うの。ただのロックフェスじゃないっ
ていう感じはありますよね。この辺が魅力かもしれない」
――フジロックのお客さんで変わってきたところはあると思いますか?
「お客さんがきれいになった。いろんなことに対して。最初の天神山では構える状況
じゃなかった。屋外にモノを捨てたりしちゃいけないという意識がなくて、回を重ね
て、これはここに捨てちゃいけないってみんな学んだと。
苗場のときに僕が思ったのは、こんな何万人いる中で一人くらいはブチ切れて『何
だよ!』って羽目を外すやつがいてもいいなと思ったの。『おれは違うぞ!』ってい
うやつが居ていいなと思ったんだけど、なかなか居ない。日本人みたいに、右へ習え
の意識かなと思ったんだけど、長く続けていくうちに、スキンヘッドしているやつ
が、タトゥー入れているやつが、顔に一杯ピアスしているやつが、ペットボトルやご
みの分別をしているのを見て『凄いなこいつら』と思い始めた。それは新鮮なんだよ
ね。こいつらブッ飛んでいるようで、実は真面目な青年なんだみたいなとこがある
じゃないですか。人は見かけじゃないなと、自分たちも学んだね」
――でも、もうちょっと羽目を外してもいいと思いませんか?
「思う。思うんだけど、人って限度がないじゃないですか。例えば、昔KISSが初めて
来日したときに火を吐くんだけど、お客さんって満足しないでどんどんエスカレート
しちゃう。『もっと火を吐け』って思うわけ。同じことで満足しないわけ。それに応
えようとする、よく分かんない利害関係が成立しちゃう。どっかに歯止めをしないと
マズいと思うから、羽目外していいんだけど、どこまでかというと、それを歯止めを
かけるのは仕掛ける側だろうなと。そこをフジロックはうまく調整している、制御し
ていると思う。ただ、危険じゃなきゃいいんだけど、もうちょっと若いんだからもっ
と『おれはおれだよ』というのはあってもいいとは思うけどね。イベントに参加する
若いコたちの意識の問題、性格の問題かもしれないね。
いろんなファッションがあっていいと思う。若いのもオジさんも同じ色に見えるよ
りは、いろんな色があった方が虹はきれいじゃないですか。僕はきれいな虹を見たい
から、そういった人たちが同じ目標の中に作るっていうと、もっとフジロックはきれ
いな虹になるかもね」
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