Fuji Rockin' People Vol.4 --金沢龍太氏(苗場旅館組合組合長)の巻--
---Fuji Rock Festivalにはいろんな分野から数多くの人たちが関わり合っています。というので、そんな人たちを紹介しようと思ってこのシリーズを始めました。誰が最初に登場するとか、そういったものは無関係です。ランダムに様々な人たちにインタヴューをして、どんどんアップしていく予定です。---- by ORG-master
苗場の地で3回目を迎える今年のFUJI ROCK FESTIVAL。
日帰り可能、至れり尽くせりの都市型野外コンサートとは一線を画し、あくまでキャンプ・インを基本に「自然のなかで生活すること」がこのフェスティバルのコンセプトだが、ここ日本でそれが受け入れられ根付くにはまだまだ時間がかかるのが現実。キャンプよりはちょっと高くつくけど、手軽に滞在できるホテルや民宿に泊まってフジロックに参加する人たちはやっぱり相当多い。
苗場プリンスホテルをはじめ、苗場にあれだけ多くのキャパを持つ宿泊施設群がなかったら、過去2回のフジロックにここまで多くの人が集まって来れたかどうか…。 そういった意味では、苗場の宿泊街を守ってきた人たちの理解と協力があってこそ今日のフジロックという気もしてくる。
今回は、フジロックを色んな面でバックアップしてくれている苗場旅館組合の組合
長をつとめるホテル「THE KINTA」
の金沢龍太氏に地元の立場で語っていただいた。
【怪物がやってきた?】
−:「Fujirockers.org」というWebサイトをご存じでしょうか?
★(金沢氏):もちろん。ウチのホテル「THE KINTA」はHPも持っているし、PCはよく使っていますよ。実は2年前、ORGのBBSに書きこんだ事もあるんです。「空き部屋、まだありますよ〜!」って。今年はもう空いてないですけど、、、スイマセン。
−:今まで苗場はスキーリゾートとして知られていましたが、3年前フジロックがやって来ると聞いた時、率直に言ってどんな気分でしたか。
★:なんか「怪物が来るんじゃないか」という感じだったですね。正直心配しました。ただ私は反対する気にはなれなかった。時期的にもオフシーズンだったし、こういったイベントも今までなかったし、いい機会なのでいっちょ腹をくくってやってみようかなと。さすがに地域では賛否両論ありましたけどね。
−:実際に99年のフジロックが終わってみてどうでしたか。
★:心配する必要はなかったですねぇ。絶対に爆音が聞こえてきてうるさいんだろうなーと覚悟していたけれど、実際そんな事もなかったし。こう言ってはなんですが、スキーのお客さんよりも全然マナーがいいのにはビックリしました。
フジロックのお客さんを一言で言うと「質が高い」という印象です。まずマナーがいい。それにキャラクターが明るい。一昔前の青春を謳歌している人たちとなんかダブって見えたんですよね。
【なくてはならないものになってきた】
−:そもそも苗場ってアクセスの面でも恵まれてますよね。
★:国道に隣接しているし、I.C.からもそんなに遠くないですから、山の中にしてはアクセスは良いほうだと思います。
−:海外から来るお客さんに対応できる宿はありますか?
★:プリンスホテル以外で英語に対応できる宿は5件あります。ウチのHPには英文ページもあります。まあ、実際に来ればなんとかなるでしょうし、これからどんどん対応も変わってくると思いますよ。
−:フジロックの経済効果はどうなんですか?
★:客が片寄らず、全ての宿を使ってもらえるというのが大きいです。それに、これだけお客さんが入るのに、とにかく手間がかからない。いまや、苗場旅館組合にとってもフジロックとは「なくてはならないもの」になってきてるんです。
【宿の予約にも工夫を…】
−:今年の予約状況はどうでしたか。
★:今年はとんでもないですよ。いままでとは全く状況が違う。やっぱり豪華アーティストのせいなんですかね、宿の問い合わせ量が多かった。連休明けからどんどん動きが出始めて6月頃まで凄かったです。去年は直前に申し込んでも大丈夫だったから今年も、という考え方は今年は通用しません。
−:昨年、苗場の民宿は満室と言われてましたが、実際は当日に空室があったと聞きますが本当なんですか?
★:その通りです。エージェントによる予約が入って一回満室になったんですけど、結局キャンセルが出たりとか。エージェントは相部屋対応なんで、予約がびっちり入るから、善し悪しでしょうね。
−:フジロックでは便利なツアーセンターもありますが、気に入った宿に直接予約入れて泊まりたいっていう人も多いんですよ。その辺のコツみたいなのはありますか?
★:去年までだと、4人部屋に2人で泊まるのもOKだったんですが、今年は混んでるし一人でも多くの人に部屋を提供したいというのもあるんで、そういう場合は断られる場合が多いんです。例えば、4人部屋を4人分予約してから友達を誘うとか、BBSで相方を探すとかね。宿に「何人集めたら部屋が取れるのか?」とお客さんの方から聞いてもらうのもいいかも知れません。やっぱり日本の人たちは旅行慣れしてないと感じる事があります。文化が違うと言えばそれまでなんですが、ヨーロッパのB&Bではシェアは当たり前ですよね。相部屋がダメならば、高くついてしまいますけど部屋単位で予約してみるとか。フジロックのように、多くの人が集まるイベントの場合は通常通りにはいかないものです。予約の仕方もひと工夫すると良いでしょうね。
−:フジロック期間中も宿の値段はそれぞれ違うんですか?
★:協会で決めるような事はしていません。苗場旅館組合のHPで宿ごとに値段を公開しています。
−:今年は苗場がスグ満室になったため、湯沢や石打まで行って泊まる人もいるとか。
★:どうしても苗場が一杯だと思い込みがちですが、実際何らかの空きはあるものです。宿によっては、ツアー会社、協会取り次ぎ、個人客向け、といろいろありますから、根気良く探してみるといいでしょう。
【僕らも楽しんでるのがフジロック】
−:フジロックを契機にして、苗場の人たちの気分感情は変わりましたか?
★:フジロックは開催時期もいいので歓迎してますよ。はじめは、メディアでいろいろな噂話を聞いていたので悪い印象を持っていましたが、今では苗場にとってフジロックは一年のピークになったといっても言い過ぎではないでしょう。以前は何といってもスキーのお客さんが大量にやってくるお正月がピークでしたから。
あと面白いのは、僕らも楽しめるのがフジロックなんですよ。朝食をお客さんに提供したらあとは会場に行って自分たちも楽しんでます。実は組合長の自分が一番楽しみにしているんですよ。まぁ、中がどうなってるのか自分の目で確かめたいって気持もあるんですが。あと個人的には良い友人が増えましたね。
フジロックを通じて、地域の文化意識を高めていければ素晴らしいな、と思います。
−:それでも、まだまだお客さんに注文があるのでは?
★:う〜ん、特にないですねぇ。Smashには注文がありますけど(笑)。それはフジロックをできるだけ長くやり続けていって欲しいですね。これからも良い関係を続けて行きたいですし、「フジロック=Naeba」のイメージを早く定着させたいと思っています。そのために僕らも努力をしなくてはいけませんけどね。
−:やっぱり「Naeba=スノースポーツ」ですからね。
★:冬シーズンの場合、スキー場あっての苗場ですから中心はやっぱりコクドなんですよ。ところが、フジロックではコクドも旅館組合も協力してやれる。スキーシーズンは元旦でもない限り全ての部屋が稼働するわけではありませんが、フジロックは全部うまる。夕食も用意しなくても良いし、フジロックのお客さんは私たちにとってある意味で「癒し」とも言えますね。
−:スキーリゾートの場合、どうしても夏シーズンは営業せずに他の仕事をしている宿も多いと思いますが、苗場も同じですか?
★:ところが、そういう宿もフジロックの期間中はほとんど営業してますよ。スキーシーズンには見えてこない苗場の自然と魅力を、もっともっと多くの人に気づいて欲しいですね。
−:フジロックは苗場や湯沢町以外の新潟県の人たちには認知されてきたのでしょうか?
★:全県の認知はまだまだ。他の町の人はあまり知らないんじゃないかと思います。もう3年目なのにねぇ(笑)あと、知事にも関心を持ってもらい、行政の理解を得る事がこれからは必要だと思います。
【これからの苗場とフジロック】
−:旅館組合として今後取り組むべき課題はありますか?
★:いわゆる「フジロック体制」というんでしょうか。素泊まり、朝食付き、門限自由、というフェスに参加しやすい体制が徹底できている宿とできていない宿とで開きがあります。お客さんの立場に立って、少なくとも苗場ではどの宿でも同じ形態のサービスを提供できればいいなと思っています。
−:いよいよ今年もフジロックが始まります。
★:3年目の今年は定着の年にしたいですね。過去2年は天気がよかったけれども、今年は天候不順を経験してみるのもいいかなという気がします。そうなればまた新たな問題点が浮かび上がるんじゃないでしょうか。どんな天候にも対応することができれば自信につながると思いますし、新たな強い関係がお互いに生まれるのではないかと期待しています。今年はアーチストの豪華さ、お客さんの数ともに過去最高みたいですし、主催者も地域にとっても試金石の年だと思います。
−:フジロックは苗場の活性化につながると思いますか?
★:毎年思うんですが、フジロックが終わったら一気に片づけるじゃないですか。あれはもったいないですね。終了後も会場のステージやテントをそのまま使用して、音楽的にもジャズ、演歌、民謡なんかをフェスティバル風にやるなんてのもいいかもれない。
みんなシェアしながらいろんなイベントをやれたら面白いじゃないですか。あとはフジロックの前には地域が中心となってお祭り行事をやるとかね。
【今年は「苗場食堂」へいらっしゃい!!】
−:昨年は地域の人を中心にWORLD RESTAURANTで「苗場そば」の販売がありました。
今年はどうなるんですか?
★:「苗場食堂」というのを出します。キノコや山菜など、できるだけ地元の食材を使ったシンプルな和食処になる予定です。
ご飯はもちろん地元で取れたコシヒカリを使います。朝ごはんはやっぱり和食で、という人は多いと思いますが、ぜひいらして下さい。
この食堂は利益の事は全く考えていませんよ。苗場という地域からのホスピタリティとして考えています。
主なメニューは、岩魚定食、きのこ料理、山菜そば、とん汁などです。できるだけいいものを提供したいので、食材がなくなったらその日の営業はおしまいになると思います。
岩魚も、注文してから焼くので出来上がるまで待ってもらいますよ。でも、ホンモノを食べるというのはそういう事。急いで腹ごしらえだけしたいという人には「苗場食堂」は向いていないかも知れませんね。
Reported by ORG-camel (July 25 2001)
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