Fuji Rockin' People Vol.5 --日高大将--
---Fuji Rock Festivalにはいろんな分野から数多くの人たちが関わり合っています。というので、そんな人たちを紹介しようと思ってこのシリーズを始めました。といっても、今回は番外編で、いきなり突然朝霧JAMをやることになった大将こと、日高氏に直撃インタヴュー!---- by ORG-master
今回、登場するのは皆さんもご存知のSMASH日高社長である。10月13〜14日に行な
われる朝霧JAMについてやフジの感想など話を聞いた。日高さんは「今日は仕事で疲れているから」と言っていたので、このFuji Rockin' Peopleのインタビューにしては珍しく短いものだったのだけど、話しているとなんだかパワーが伝わってくる。この人の情熱や発想はどこから沸いてくるのだろう?
【フジとは違うコンセプト――朝霧JAM】
――まず、朝霧JAMをやる動機なんですが。
「面白いから」
――やはり、あの場所でやりたいというのがあったのでしょうか?
「そうだね。あの場所でこそやりたいというのはあるね。98年にはあの場所でフジロックをやろうとしたし。だけど、フジロックを苗場から移す気持ちは今はないし、又、フジロックとは違ったコンセプトでやりたいというのがある。だから朝霧JAMのJAMはジャムバンドのJAMでなくていろんな音楽をMIXするという意味だから。フジロックは「ロック」っていうコンセプトがあってロックを中心に音楽の幅をだんだん広げていったけど、朝霧は最初からジャンルは問わないからね。といっても俺達の選択になるけど。最初からあらゆる音楽を取り込んでいこうと。富士山の麓でなおかつ民宿もホテルもなくて、ハードコアなキャンプをやることになる。1泊2日のオールナイトパーティでフジで鍛えられたものが問われる、ハードコアなキャンプイベントだよ」
――97年の一回目のフジロックの時には、朝霧を検討しなかったんですか?
「あそこはしていない。まず当時は貸してくれなかったよ。今回できるのもフジロックが成功したからで、98年には相手にしてくれなかったからね。98年のときも一部の人は賛成してくれたし、朝霧アリーナは富士宮市の持ち物でOK出たけど、地元の人の説得で時間がかかった。なおかつ、夏は使えない。夏は普通のときでも道路(国道139号線)がすごい交通渋滞だから、フジロックを持ってきたらもっとひどくなるね」
――今回の朝霧の規模は考えていた通りでしたか?
「入れようと思ったら5万や10万は楽に入るけど、そこまで大きく出来ない。対応も出来ないし。何万人入れたら治安上別個の対応しなきゃいけないし。今回は5000人であの中でキャンプしてライヴパフォーマンスをゆっくり楽しんで、なおかつ車もつけられる」
――来る人にアドバイスは?
「寒さだろうね。それからPHISH以降日本でもポピュラーになってきたアメリカのジャムバンド、GalacticはACID JAZZをもうちょっとアーシーにさせた感じ。OZOMATLIはフジで観たからみんな知っているだろ。THE DISCO BISCUITSは(グレイトフル)デッドというと言いすぎかもしれないけど、一般的なジャムバンドに近い。それから日本のレゲエ、スカ、エイドリアン・シャーウッドがダブDJをやり、山塚君とかでテクノからトランスに入って、トータル・エクスプレスっていうのもまあトランス系かな。ちょっとしたライヴがあって、あとTSUYOSHI君のトランスDJがある。そしてEARTH DANCEっていうイギリスでスタートしたダンスパーティをオーガナイズしているところがあるんだけど、10月13日に世界各国で野外パーティをやるんだよ。で、世界中で同じ時間に同じ曲を流すんだよ。日本では朝の8時だな。EARTH DANCEは自分たちのテントで土曜の昼1時からやっているんだけど、この時間の前の6時から8時くらいまでメインステージでやってもらう。それをインターネット結んでセレブレイトする。それから少し休んで、11時からGocooっていう和太鼓にトランスっぽいのを合わせたのをやって、KEMURIが出てアメリカの3バンドが出て夜の6時か6時半には終わらせる」
――自分も朝霧に行ったことありますが、あそこは本当にいい所ですね。
「先週キャンプやったけど、富士山が物凄くきれいだった。夜は星がきれいで北極星も見えた。三日月も出ていたけど、夜中も星の光でずっと富士山が見えるんだよね。夕方は赤富士がきれいだし。ただ、寒いな。キャンプの初日は冷え込んで零下までいったんじゃないかな。まあ、火を焚いて踊っていたら大丈夫だけど、直火は焚けないんで、ドラム缶とかこっちが用意するつもり。とにかく寒さ対策だね。苗場の寒かったけど、それどころじゃないからね」
――例のテロ事件の影響は?
「今のところないな。全部聞いたけど、大丈夫だった。Galacticとかの連中は近くの温泉に連れて行ってくれって言っているよ。いまのところはスムーズにいっている」
――朝霧はシリーズ化するんですか?
「今回5000人規模でやって、メインステージ一個とダンステントが上手くいって地元の人が認めてくれれば来年は4倍の規模、2万人以上でやりたいね」
――そこにサーカスとかを呼ぶのは?
「それはやらない。それだったったらフジになっちゃうし。フジとは違ったコンセプトでやりたい」
――じゃあ、マッタリとした感じと言うか・・・
「そうだね。今回はステージに向かってアリーナの後ろの方にはテントとか悪くてもタープは張れると思う。斜めになっているけど。リラックスして観れるんじゃないかな」
【フジロックには満足していない!?】
――では、朝霧とフジとの関係ですが。
「他のフェスティバルってみんな夏じゃない?流行ったからってみんな同じ時期にやるのは好きじゃないんで、寒くてもやってみたら面白れえだろみえてのはある。寒くても火を焚いてやれば楽しめるんじゃないの?というので、あえて10月にした」
――インドアのイベントってやらないのですか?
「エレクトラグライドがあるじゃない」
――あ、そうですがオーストラリアのビッグ・デイ・アウトに合わせたイベントとか。
「そのプランはあったけどね。やるかもしれないし、やらないかもしれない。条件が整わないとだめだし、メッセじゃ無理だもん。東京ドームになっちゃうだろ。そういうイベントは今のところないな。2〜3年前にやろうと思ったけど、東京ドームはあんまり使いたくないし、だからと言って野外の球場じゃ寒いし」
――今年のフジの最終日に日高さんがBIG CAKEのDJブースでストーンズの「サティスファクション」をかけていたんで、日高さんは今年のフジに満足していないっていう話があるんですが。
「それは読みすぎだよ(笑)。ただ、ストーンズが好きなんでかけただけだよ」
――その後でCCRの「Have you ever seen the rain?(邦題:雨を見たかい?)」をかけたし、これは何かのメッセージではないかと。
「好きだからかけただけ。あの時は最後の曲としてスタッフに捧げる意味でビートルズの『A HARD DAY'S NIGHT』をかけて、これは『みんなキツイ1日だったな』というのはあったけど、他は意味ないよ。メッセージはなくて曲をかけて楽しんだだけ」
――では、今年のフジの感想は?
「毎年同じこと言っているけど、お客さんがイベントを作ったよね。ステージごとにコンセプトを去年以上に考えたし、それが上手くいったし、今まで来たことがないお客さんが来たと思うし、幅広い年齢のお客さんが来てくれた。5年やって過渡期というより、違う方向に行く折り返し地点という感じだね。フジロックは若い人のためだけじゃ無いしね。もっといろんな人に来て欲しい、ということでは、フジロックはポイントにいるんじゃないかな」
――では来年はもっと幅広い年齢を意識したものになる?
「そうなるかも知れないし、まだ分からないな。来年やることはやる。来年のグリーンステージのヘッドライナーは一個決まっているけど、後は今から考えるよ。でも今年みたいになるか分からない。スムーズにいくかどうか分からないし」
――今年は大きなトラブルも無かったみたいでしたね。
「うん、去年も少なかったけど、トラブルは少なかった。地元の人もスタッフもお客さんも同じ場所で3回、経験を積んでいるのもあるだろうね。でも、オレの性格からするとあんまりスムーズにいくと面白くねえなというのはあるけどね」
――台風が来そうでしたが。
「来ないと思ったけど、来ても一年目みたいにならないように手を打っておいたからね。天候が悪くて場内のコンディションが悪くても、それに対応するようにしていたから」
――何か手直ししたいところは?
「いっぱいあるよ反省点は。オアシス(エリア)がやかましかったなあ。あるクラブは来年は音出すなと(笑)」
――でも、あれが楽しかったという人はいっぱいいますよ。
「それは分かるけど、どこか一箇所は休めるようにしないと。音は大きいし、あっちこっちでガンガンやって張り合っているんもんな。レッド・マーキーやオアシス界隈の騒音問題と言うと変だけど、それでデザインを変える必要があるな。もっとゆっくり出来ないと」
――深夜にもっと奥の方を開放するというのは?
「機材があるんでダメだな。いつかはアヴァロンやヘヴンを解放したいけど、そこ
は機材があって、そこで事故になったら翌日出来ないしな。それにあそこでスタッフはみんな仕事しているんだよ。お客さんはいなくなるけど、その後で彼らは4〜5時まで仕事している。いつかはヘヴンでオールナイトをやらせたいと思うけど」
――あと、今年の目玉のひとつとしてサーカスがあって凄く面白かったんですが、あ
あいうのをやらないのですか?
「ちょっとお金がかかりすぎた(笑)。まあ、考えてはいる。サーカスをみんなに紹介したかったというのがあって、日本でサーカスをやるというと、まあ、情報がないんだから仕方ないけどBBSで『動物を虐待しないで下さい』とかいう書き込みがあって、まだそういう発想しかないだな。あれこれ言うより、どういうのかは観てもらえば分かる、こういうサーカスがあると。みんなビックリしたと思う」
――ビックリしたと言えば、サーカスの反対側でストリップがあったのですが、あれは誰のアイディアだったのですか?
「俺達が考えたんだよ。みるく(東京のクラブ)の人にカジノバーの運営をやってくれって頼んで、いろいろ話し合って、カジノはお金をかけちゃいけないとか、いろんな規制があるし。その時にいろんなアイディアが出てきて、あそこに畳を敷いて、片肌脱いだ若い女の人がつぼを振って、周りにはもみ上げの恐いオッサンがいて、サクラを仕込んで『てめえ! インチキしただろ! 指詰めろ!』とか大喧嘩始めるというのがあったけど、これはダメで、だったらストリップなんか面白いからやりゃいいじゃん、でも全部はダメよ、と。あれは冗談だからね。あくまでもお笑いのジョークだから。オレの個人的な趣味じゃないから。というのも、始まった時にいたんだけど、恥ずかしくて見てられなくてすぐ出ちゃったから」
――来年も規模は同じですか?
「そうだな。もう土地もないしな。土地が出てくればいいけど。
ところで、これいつ載るの?10月4日にさ、朝霧JAMの宣伝であちこちのラジオに出るんだよ。静岡のFMに出て、それから新幹線で名古屋へ移動して、最後に大阪で22時からFM802出るんだ。12時頃からBIG CAKEにいるから遊びに来いよ、って書いておいて。ただし、飲み物代は自分で払ってね。5日には帰るけど」
【テロ事件について】
――ところで、アメリカの同時多発テロ事件についてですが・・・
「あの日、夜の10時くらいにニューヨークのアダム・ヤウクから電話があったんだよ。チベタンフリーダムの件でありがとう、とか最近どうしている?という話をして、15分くらい話して、外に出たんだよ。その後だもんね。事件が起きたのは。ただ、あそこはビジネス街で友達が住んでいないんで安心してたんだよ。そうしたら、2日くらいたってオレの友達が行方不明だってきて。それはジョニー・サンダース&ハートブレーカーズの後期のメンバーでサックスのジェイムス(故人)って居たんだけど、その人の奥さんのアリスっていう人がいて、その人がメリルリンチ(証券会社)に勤めていて、何日か連絡取れなかったけど、この前連絡来て助かったという話があった。彼女は出勤前、地下鉄の駅を出たところで巻き込まれたけど、走って逃げたらしい」
――他のミュージシャンの反応は?
「昨日かおとといプライマル(スクリーム)のメンバーの連中と話した。『どうすんだよあのシングルは?』って。まあ、レコード会社が出すかね? あとはアメリカのミュージシャンとはお悔やみとか無事だったか、とかだね」
――ジョン・レノンの「イマジン」が放送自粛になった件は?
「馬鹿馬鹿しい」
――ああいう自粛を見ているとアメリカにも日本的なものがあるのかな、と。
「向こうのメディアが飛行機のアタックの映像を流すのを自粛するのは分かるし、被害者の家族のことを考えたら。そういうメディアの姿勢も分かるけど、『イマジン』をかけちゃいけないというのは、どこかの誰かがリスト作って、どこかのオッチョコチョイがそれに従っているだけだろ。それ自体大きく取り上げてもしょうがないし、そういうやつがいるだろうなってことだよ。君がそういう質問をすること自体、日本から見れば対岸の火事なんだよな。それは大きな間違いだよ。『イマジン』がどうですか、って言うのは認識が浅いんだよ。情報として入ってきているだけで、遠いところの問題なんだな。だから、ひとつだけピックアップしていくと物事が見えなくなる」
――では最後にもう一度朝霧について何かありますか?
「来てもらえばわかるよ。楽しいから。寒さ対策を十分に。秋空の下で、フジとは全然違ったお祭りになると思う」
Reported by ORG-nob (Oct 2, 2001)
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